第117話

 第二皇女と僕が普段執務をこなしている部屋に、アレシアが来ていた。

 普段ならお手伝いのためにいる

 この部屋にいるのは僕と第二皇女とアレシアだけだ。


「私は……あなたの話を聞いてトイ民族のところに向かったわ」

 

 アレシアは第二皇女を無視して僕だけを見ていた。


「そこで私は何もかもを聞いた。あなたが何者かも、あなたが何をしたかも」


 アレシアはゆっくりと静かに話し始める。


「……それでトイ民族のところには一つの手紙が届いていた。私はその手紙に従い、ここにトイ民族たちを率いてやってきた。少し離れてたところに待機しているわ」


 よし。ちゃんと想定通りに動いてくれたようだ。


「手紙に書かれていた内容。それはグニギラ連合国の王都で争いが起こるということ。だから、私は率いてきた。……私は聞いたわ。争いが起きたのは今から10日前のことらしいわね?」


「はい」


「手紙が届いていたのは今ら15日前のことよ」

 

 アレシアの一言。

 それに第二皇女も驚き、僕に視線を向けてくる。


「あなたは……全てを知っていたの?これは……あなたが仕組んだ壮大な茶番劇なの?」


「ふむ。確かに一部はその言うとおりですね。全てが僕の予想通りに進んでいますよ。グニギラ連合国で内乱が起こり、あなたがトイ民族のもとに行って一致団結して戻ってくる。僕の筋書き通りです」

 

「なっ!?な、なら!」


 平然と肯定した僕の言葉にアレシアは立ち上がる。

 

「ですが。あくまで一部です。僕が仕組んだりなんてしていませんよ。あくまで予測していただけです。僕は積極的に町中を確認していました。それらの情報を精査した結果。こうなるであろう未来を予想していただけに過ぎません。僕がいなくとも争いは起きていますよ」


「そ……そう。そうなの……」


「僕がしたことは来たる内戦でどうすれば最も帝国が利益を享受できるかを考え、策を講じただけです。僕のおかげで内戦が早期解決すると言ってもいいんだよ」


「……そう。なら、良かった……こんなのを引き起こしたのがトイ王族だったら……!」


「ご安心を。それで?他に僕に聞きたいことは?」


「いえ、ないわ」

 

 アレシアは安心したような表情を浮かべる。

 素直だな。

 全てが嘘なのに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る