第13話
「ふっ」
第二王女は魔法も、魔術も何も使わず剣を振るってくる。
魔術や魔法を使っては勝負にならないという判断だろう。
あくまで剣術勝負として。
「はっ」
僕もそれに合わせて剣を振る。
ただの剣術勝負として。
速度も、派手さもない地味な戦い。それ故に最も他人の剣の腕を正確に図る事ができる。
こうして剣を合わせて第二王女の剣の腕をまざまざと感じることが出来る。
第二王女の剣。それは派手さもない堅実な剣。無駄のない基礎にどこまでも忠実な剣。
うーん。第一王女を含め、武闘派に属する王族の中では最も弱いかな。流石に文官タイプの人間には勝てるが。
まぁ第二王女の真の強さは頭の良さとも言えるから、剣の腕など関係ないのだが。
「流石ね。独学とは思えない素晴らしい剣だわ。技術は私以上と言っていいわね。」
「ありがとうございます!」
第二王女が僕にお褒めの言葉をくださる。
今の僕は『スキア』が振るう僕の剣の中では違う剣を振るっていた。
『スキア』が振る剣は魔法と一緒に使うことで爆発的な力を発揮する剣なのだが、今の『リーエ』として振るっている剣は、相手を剣だけで殺す剣だ。
僕にとって最強の剣術ではないけど、剣だけで戦う場合僕の中で最も強い剣を振るっている。
僕は人類最強に近い人間。
第二王女よりも遥かに高い剣術を修めている。
それは周りでぽかんと口を開けている第二王女の配下たちにも十分すぎるほどの伝わっただろう。
「行きますね?」
僕は一言言ってから剣の動きを変える。
防御主体から攻撃主体へと。
基礎に忠実に動く第二王女をあざ笑うように振るわれる奇想天外な僕の攻撃は、第二王女の守りを容易く突き破る。
「これで終わりです」
僕は首に剣を突きつけた。
どうせ第二王女の配下となるなら出来るだけ重要なポジションに就きたい。
そっちのほうが僕の目的のためになるだろう。
表舞台で直接動けるというのは楽だからね。
「……私の負け、ね」
第二王女はゆっくりと剣を下ろす。
それを見て僕の同じように剣を振り下ろした。
「流石ね。負けるとは思わなかったわ」
「剣術だけが私の自慢ですので」
「剣術だけとはいえ私に勝ってみせた。それだけで彼の力の証明としては十分でしょう。よって、あなたを私の配下として正式に雇用します」
第二王女は僕の前に自分の手を持ってくる。
「ありがたきしあわせにございます」
僕は第二王女に跪き、ゆっくりとその手を取る。
そして僕は柔らかく甘い匂いのする第二王女の手の甲に軽く口付けをした。
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