公爵家の無能な長男は規格外の悪の総統閣下!?〜僕が作ろうとしたのは秘密結社なんだよ!決して美少女ハーレム慈善団体じゃないんだよ!〜

リヒト

プロローグ

 ほのかな光を灯す蝋燭がゆらゆらと揺らめいている。

 蝋燭に灯されたその部屋は黄金に輝いていた。

 

「それでは『クロノス』の定例会議を始める」

 

 蝋燭に照らされた一人の男。

 黄金の円卓の一席に腰を下ろしている黒髪に赤の瞳を持った一人の小さな男の子が小さな声で告げる。

 その声はこの狭い黄金の部屋に小さく響き渡り、そして消える。

 ……。

 …………。

 沈黙。

 間違いようのない完璧な沈黙。

 誰がどう見ても完全な沈黙がこの場に降り立っていた。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!」

 

 何もかもが似合わない悲しき絶叫が響き渡る。

 一人の美男子はさっきまでの威厳もかっこよさも捨てて叫ぶ。

 そう一人。

 円卓に座っているのは彼一人だった。

 元より威厳もクソもなかった。

 ただ他の人よりちょっと金を持っているだけで、誰も仲間がいない黄金で飾られた空間に一人ぼっちというクリぼっちよりも哀れな悲しき男の子だった。

 

「くそくそくそ自分から組織を一から作るって難しすぎるだろなんだよそれ無理ゲーオブザ無理ゲーなんだよ難易度を根本的に間違えているんだよなぁもうすでにこの世界には一杯一杯裏組織は存在しているというし優秀な人間なんて大体貴族の肥やしになるか裏組織に入るかの二択で最早もうフリーの優秀な人間なんてもう残っちゃいないしそもそも俺のような見た目クソガキのまだ8歳でしかない俺が威厳なんて出せないし組織のリーダーが務まると思えないし思ってもらえないし頼れる人間なんて存在していないし立場上大々的に動けないしそもそも縛りが多すぎるんだよあまりにもあまりにもあまりにもそもそもの話なんで公爵家の人間である僕がこんなことをしなくちゃいけないんだもっとこうさもっとなんかあってもいいじゃんもう少し楽な世界でもいいじゃないかなんで泥舟のような過去の超大国に生まれなきゃいけないんだよ今にも潰れそうな小国よりも大変ハードだぞ現実を見ないで過去に捕らわれている人間は多いわ利権にしがみつく輩しかいない王戦で国内は揺れまくり海外も力をつけ団結してきているし魔族共も強くて動きが活発になってきているしそれに……」

 

 ぶつぶつ。

 8歳の小さな小さな男の子は一人ぶつぶつとつぶやき続ける。

 愚痴を。

 その姿はまるでクソ上司の愚痴を吐き続ける悲しきサラリーマンのようだった。


「あぁ!クソ!それでもやるしかない。……奴隷は無理。優秀な人間はいない。……いや探せばいるか?……マッチポンプ……盗賊……」

 

 それでも哀れな少年は必死に頭をフル回転させ、策を練るのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る