心臓怪火 9
「ち、違うんだっ!」
男は動揺しているのか、震える声で叫んだ。
「た、確かに俺が殺したけど、でも、本気で殺そうだなんて考えてなかった!!
でも、何故か抑えきれないんだ!
今だって、身体が勝手に動いて、腕だってこんな事になっていて……うぅ!」
男はまるで懺悔するかの様に膝からくずおれたかと思うと、無事だった片手で眼を覆い出した。
「あ、あんたも逃げろ!
これ以上殺したくなんてない!
俺だって、寧ろ被害者なんだ!!」
男は何かを抑えつける様に体をぐねぐねと動かしながら叫ぶ。
「でも、一人目は違うでしょ?」
男に責めるでもなく淡々とした口調で私はそう問い掛けた。
それを聞いた瞬間、男の動きがぴたりと止まる。
「……は?」
「一番最初の、まだ完全に花に支配される前の状態なら、その殺人衝動を抑える事は出来た筈。
それなのに、お前はそれをしなかった」
「……何が、言いたい?」
男は赤い瞳で私を睨みながら問い掛ける。
「一人目の会社員はお前の意思で殺した。
確かにお前は被害者でもあるかもしれないけど、加害者である事に変わりはないんだよ」
「ち、違う違う!
ちがウチがウチガう!!」
そう叫ぶ男の声は段々人間の声から獣の様な声になっていく。
それから男の身体からミシミシと音が鳴り、男の両手からシャクヤクの茎が伸びだした。
それらは一直線に私を目掛けて凄まじいスピードで伸びていく。
しかし私はそれに驚く事もなく手に持っている刀でその茎を斬った。
斬られた茎は火の粉を出して燃えて炭となり消えていった。
「おレじゃナイ!
周リが悪インダ!!」
男がまた手足から茎を伸ばし私を狙ってきたが、その茎に数発銃弾が当たる。
銃弾が当たった茎の先はまた火の粉が散ってはボロボロと炭になり消えていった。
「!!」
突然の狙撃に男は怯んで茎を縮め、何処から撃たれたのかキョロキョロと辺りを見渡した。
その男の様子を、とある高層ビルの屋上からリトが眺める。
「よし、あの茎みたいな奴には効く様だな。
しっかし、これで見るのは二度目だけど、人から植物が生えてる光景って気持ち悪いな」
それからリトは再度ライフルを構えた。
因みにリトの使っているライフルにはスコープが付いていない為、光の反射などで相手に見つかる事はまず無かった。
狙撃された男は狙撃手を見つけようと四方八方に茎を伸ばしだす。
私はその茎をなるべく細かく刻む様に斬りつけた。
「っナ!!」
男は何処からともなく撃ち込まれる銃弾と私の斬撃にどうやら怒りが沸点に達したらしく狂った様に叫び出した。
「~~こざカシいっ!
シネ! しネ!
しねぇエェぇっ!!」
それから男は茎の数を倍に増やして私の刀と、その刀を持っている右腕に絡みつけてきた。
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