心臓怪火 5
「……これは?」
手渡された新聞をまじまじと見つつアイリスは情報屋に問い掛ける。
「今朝の朝刊だ。
怪奇焼殺事件、最初の事件から数えて今回で四件目だとよ」
アイリスの持っている新聞紙を俺は横からチラッと眺め見る。
新聞の一面にはでかでかと「怪奇焼殺事件、またしても新たな犠牲者が」と書かれていた。
「まさか、今回のこれも、前みたいに花でもあったのか?」
「そのまさかだよ」
俺の問いに、情報屋は懐から出した煙草を吹かしながら答える。
「おいおっさん、ヤニ臭えからやめろ」
「えー? おじさんヤニ中毒だからこれないと死んじゃうんだけどなあ」
俺が冷ややかな目で睨むと情報屋はヘラヘラと笑って煙をぷはーと吐き出した。
「ならさっさと死んじまえ」
「おいおい、人にそんな事言うもんじゃないぞー」
それから情報屋は真面目な顔で話し出した。
「……ま、話は戻すけど、お前らもニュースくらい見てるならこの事件の異質さは分かるだろ?
何せ被害者はみんな心臓まで何か鋭いもので刺された様な外傷と、何故か心臓だけが丸焦げになって死んでいる。
普通の人間業じゃねぇな。
それと一番最初の被害者の時だけその死体の横に、紫のシャクヤクの花が落ちてたんだそうだ。
因みにこの辺りでシャクヤクは咲かない上に本来春に咲く花らしく、恐らく犯行後わざわざどっかから持ってきて置いたと見られてるらしいけど」
情報屋はそう言いながら四つ折りに折り畳まれたメモ用紙の様な紙を1枚俺に手渡す。
俺はそれを開いて眺めた。
「……ふーん。
て事は、前の事件とおんなじなのか?」
俺の質問に情報屋はうーんと唸る様に考える。
「ま、前回と違って今回は花があったのも最初の一件目だけだから確定は出来んかもしれんが、それでも可能性はあるな。
という事でお前らはまたこの犯人を見つけて捕まえて……って言っても、もう既に四件目だから助かるかは知らんが……ま、頼むわ。
それとリト」
それから情報屋は神妙な面持ちで俺に近付いて小声で耳打ちしてくる。
「くれぐれもアイリスちゃんの事よろしくな」
「よろしくって言われてもな。
ぶっちゃけあいつ次第だろ?」
情報屋にそう言われて俺は頭を掻きながらそう答える。
正直そんな事頼まれたって面倒なんだが。
つーか、俺にそんな事頼むなって思う。
「まあそう言わずにさ。
そんじゃお二人さん、後は頼んだぜ」
情報屋は俺とアイリスにヒラヒラと手を振ると、そのまま何処かへと歩いて行った。
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