08.アタシの小さなご主人様_03
アタシは膝立のまま、マースの命令を待った。
「日高千歳に命ずる、立て」
-キィィィン-
マースの指輪が赤く光る。そしてアタシのチョーカーの星飾りも赤く光った。
「おっ?おおっ?」
アタシの身体がアタシの意思と関係なく勝手に動き、立ち上がった。
マースは右手を翳しながら、アタシに命令を続ける。
「日高千歳に命ずる、悪魔になれ」
-キィィィン-
またマースの指輪が赤く光り、アタシのチョーカーの星飾りも赤く光る。
アタシの両手が勝手に動き、腹部と胸間に指を当てる。そして、
-バチィッ-
(変わる、アタシの身体が、変わる)
静電気の流れるような感覚と共に、触れた部分から全身に向けて熱い感覚が身体を巡る。変わっていくアタシの身体。手と足が青くなり、目が悪魔の目になった。
まだアタシの身体は止まらない。アタシの右手が自分の口に当てられる。
-バチィッ-
(変わる、全部変わる)
-メキメキ-
「んくっ!?」
頭の軋む痛みにアタシは仰け反る。痛みと共にアタシの頭蓋骨がメキメキを音を立て角が生えた。やっぱり角が出る時は頭が痛い。アタシの手足以外の部分も一気に青くなっていく。そして背中に生える大きな翼。髪が金色に変わる。さらに黒装束の隙間から身体中に浮き出てくる黒い模様。
「「「おおぉぉっっ……」」」
再びアタシの変身を見た周りの兵士達がざわめく。
アタシの身体はアタシの意思と関係なく、マースの命令によって完全に悪魔化した。
そんなアタシに向けて、マースは命令を続ける。
「日高千歳に命ずる、僕の前に跪け」
-キィィィン-
またマースの指輪が赤く光り、アタシのチョーカーも赤く光る。
「あっ?」
悪魔化したアタシの身体は、マースを前にして勝手に片足を地面につけて跪く。
そんなアタシの様子を見た兵士たちが口を開く。
「おおっ、悪魔がマース様に忠誠を誓っているぞ」
「あの悪魔にまで効くとは……」
「流石マース様だ」
ざわつく兵士達。悪魔化したアタシがマース相手に跪いているのに感心しているらしい。
そんな中、兜を被った兵士の一人が、笑いながら余計な一言を言った。
「ははっ!あの化け物め、完全にマース様の意のままだぜ」
「ばっ!?バッカおめえっ!?」
余計な一言を言った兵士を、その隣に居たショーンが焦って止めようとしたが、遅かったらしい。
マースの表情がまた、冷たい、無慈悲な真顔に変わっていく。
-キィィィン-
そしてまた無詠唱のまま彼の杖が青く光り、杖から太い氷柱が出現して兜を被った兵士に向かって飛んでいく。
-ヒュゥンッ-
-カァンッ!ガランガランッ!-
「うわっ!?うわああっ!?」
マースの放った氷柱が、兜を被った兵士の頭を掠め、兵士の兜を弾き飛ばした。氷柱に吹き飛ばされ、大きな音を上げて地面に落ちる兜。悲鳴を上げて倒れる兵士。氷柱は兵士の兜を弾き飛ばした後、カーブを描くような軌道でそのまま上空へ消えていった。
「ジョシュア、僕とグレッグとの会話を聞いていなかったのか?次に千歳姉様を化け物と呼んだら、顔に氷柱を当てると言ったハズだ」
マースはまたフライアのように、静かに、だけど身も凍えるような冷酷な声でジョシュアと呼ばれた兵士に告げる。蔑むような冷たい目だ。
「ひぃぃっ!?もっ……申し訳っっ……あっ?あっ……はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ」
ジョシュアと呼ばれた兵士もグレッグと同じくマースの冷酷な声と視線に恐怖し短い悲鳴を上げた。彼のこめかみ辺りから赤い血が垂れている。それでもなんとか非礼を詫びようと言葉を話していたのだが、途中で極度の緊張状態に陥り、過呼吸になって言葉を続けられなくなった。グレッグと同じようにやっぱりマースから目を逸らし、苦しいのか手で胸を抑えながら荒い息遣いをしている。
(悪魔化こそしてないけど、マースの方がアタシよりフラ爺に近いんじゃないかな)
マースの見せる怒りというか、威圧。あれがアタシの中で暴れていたゴブリンを黙らせたフライアにとてもよく似ていた。アタシは性格上、相手を威圧して黙らせるなんてのは得意じゃないし、そうそう出来ない。
「お、俺ぁ、悪魔になったねーちゃんよりも、今のマース様の方がずっと怖ぇよ……」
ショーンがボソッと呟いた。
「ショーン、聞こえているよ」
「うっひ!?」
眉間に皺を寄せてショーンに忠告するマース。ショーンは焦って両手で口を塞いだ。
「すみません千歳姉様、途中でしたね」
アタシに向き直り、また優しい顔と声で語りかけてくるマース。
アタシは跪いたままマースを見上げて言う。
「うん、でもこれ凄いね、ホントにアタシの身体がマースの言ったとおりに勝手に動く」
「命令は次で最後です。これ以上は余計な命令はしませんので、安心してください」
マースはアタシに優しい笑顔を向ける。アタシは彼の笑顔を見るととても安心する。この笑顔を向けてくれるなら、アタシはどんな命令だって喜んで聞くつもりだ。
「お前たち!これから千歳姉様にお前たちに危害を加える行動を禁ずる命令をする!これで満足だろう!?これでもう文句は無いな!?異議のある者は今のうちに前に出ろ!!後で言って来たらそこのジョシュアみたいに顔に氷柱をぶつけるからな!!」
マースがいつの間にか気絶しているジョシュアを指差しながら凛とした声で兵士達に向けて叫ぶ。アタシへの次の命令で今回の件は全部手打ちにしろという事らしい。
マースの言葉を聞いた周りの兵士たちは、誰一人として動かなかった。
「良し、それならいい」
またマースがアタシに向き直る。とても優しい顔で、アタシを惹きつけるその顔で。
「千歳姉様、よろしいですか?」
「うんっ、マース、いいよっ」
アタシはマースに素直に返事をする。もうどっちが子どもだか分からない。
「では、日高千歳に命ずる、この命令は最優先事項である!ボーフォートの兵及び民へ危害を加えることを禁止する!!」
-キィィィン-
マースの指輪が赤く光る。アタシのチョーカーも赤く光る。
しばらくして光が収まった。アタシは眩しさに両手で目を隠していたが、それを離して自分のチョーカーの星飾りを見る。
「……何ともないけど、今の命令ってどうなったの?」
アタシはマースを見上げ疑問の表情を浮かべて言った。。先ほどまでの命令と違い、身体が勝手に動くようなことが無く、抽象的な命令だったのでアタシには命令された実感が無い。
「指輪とチョーカーは光りました。命令の効力は発生しています。あ、もう自由にして貰ってもよろしいですよ」
マースはアタシの跪けという命令を解いた。
「んっ?お、動く?」
アタシの身体は急に自由に動くようになり、アタシは立ち上がった。
「実感、確かに無いですよね。そうだ、試してみましょう、千歳姉様、僕を殴ってみてください」
「えええっっ!?」
マースは笑顔のまま、アタシに自分を殴れと言う。アタシは驚愕する。そんなことをしたら、マースがケガをする。いや、悪魔化しているアタシの腕力なら、ケガで済んだらいい方だ。勿論そんな指示は聞けない。
「ちょっ!?マース様!それはヤバイぜ!?」
「マース様、危険です。そのような命令は……」
ショーンとジェームズがマースを止めに入る。
「大丈夫だよ、僕もボーフォートの兵及び民なんだから、それにこの命令は最優先事項に指定したから他のどんな命令よりも優先される。千歳姉様は僕を殴れないよ」
マースはなんでもない風に言う。だが周りの兵士達には動揺が広がる。
「あ、お前たち、千歳姉様に武器を向けたら許さないからな、動くんじゃないぞ」
そう言って兵士達を睨みけん制するマース。兵士たちは静まり返る。
「待って!待ってマース!その命令はやめて!?間違って貴方を傷付けてしまったら!アタシっ!!」
アタシはマースに命令をしないよう頼み込む。勿論アタシにはマースは殴れない、殴る訳がない。だけど彼が命令をしてしまったら?アタシは彼の命令には逆らえない。
マースはそんなアタシの訴えを聞きつつも、指輪を構えた。
「大丈夫ですよ千歳姉様、日高千歳に命ずる、僕を思いっきり殴れ!」
「やだっ!?やだよマースっ!?」
アタシは全力で拒否の言葉を言う。だが命令は実行されてしまう。
-キィィィン-
マースの指輪とアタシのチョーカーが赤く光る。アタシの身体が勝手に動く。右手を大きく振りかぶり、マースの頭に狙いを付ける。アタシは勝手に動く自分の身体に必死に抵抗する。マースを殴りたくない。彼を傷付けたくない。だけど手は振り下ろされてしまった。
「やだっ!?やだあああっっっっ!!」
-ブゥンッ!-
周りの兵士達のどよめきが聞こえる。
アタシの手は、マースの頭に当たる直前にピタッと止まり、そこから動かなくなった。
「ほら、平気だったでしょう?千歳姉様。……千歳姉様?……あっ」
平気な顔で言っていたマースだが、アタシの顔を見て気づいたようだ。
「やだよ……マース……やだよぉっ……こんな命令はやだぁっ……」
アタシはマースの頭を殴る寸前のポーズのまま、怖くて泣いていた。マースを傷付けるのが怖くて、でも勝手に動く自分の身体を止められなくて、顔をくしゃくしゃにしてボロボロと涙を流して泣いていた。
マースはアタシの様子に焦って命令を解除する。
「かっ、解除!僕を殴るって命令は解除!」
マースのセリフと共に、アタシの身体からふっと力が抜け自由になる。だけどアタシはそのまま地面に崩れ落ちて、両手で顔を覆って泣き続けた。
「ひっ……ひぐっ……やだっ……こんなのやだっ……」
「ごっ、ごめんなさい千歳姉様っ!ぼ、僕、調子に乗っちゃって、ごめんなさいっ!ごめんなさい千歳姉様っ!!」
しゃがみ込み顔を覆って泣き続けるアタシ。先ほどまでの威厳も無く、泣き続けるアタシにただひたすらに動揺して謝罪の言葉をかけ続けるマース。
だけどアタシの涙は止まらない。ただただ怖かった。触手にメグを連れ去れたあの時と同じくらい怖かった。アタシの手でマースが肉塊になるのを想像して血の気が引いた。マースがいなくなる事を想像し恐怖して、ガタガタと手足が震えている。
「ひぐっ……うううっっ……ううっっ……」
「ああ……ごめんなさい……ごめんなさい千歳姉様……」
泣き止まないアタシにマースもあたふたしまま謝罪し続ける。指輪の力を使ってアタシに泣くなと命令すればアタシは泣き止むだろう。だけどマースはその命令をしない。彼の中のアタシは、従者の日高千歳ではなく、あくまで従姉弟の日高千歳なんだろう。その気遣いは嬉しいが、だからってあんな命令をされたらアタシが傷つくのは想像しなかったのだろうか?いや、マースだってその辺の気遣いは出来る、下手な大人よりずっと。だけど今回の件に関しては若気の至りとでもいうのだろうか、やっぱりまだ子どもなのだろう、アタシの気持ちに気づく前に勢いでやってしまった。確かにアタシはどんな命令でも構わないと言った、だけどそんなアタシの想定にマースを傷付けるような命令は入っていなかった。アタシも想定が甘かったのは否定できない。だけど出来ればもう少しアタシの気持ちを、配慮をしてほしかった。
「マース様、今のはマース様に非が有ります」
「サ、サティ!?」
マースが兵達の方を見てびっくりしている。アタシを囲む兵士たちの前に、いつの間にかメイド服に着替えたサティさんが立っていた。朝、テントの中でひと悶着会った時にアタシが吸精して気絶していたが、もう復活して起きてきたらしい。
そのままスタスタと近寄って、泣き止まないアタシの前にしゃがみ込み、アタシを優しく抱きかかえる。
「もう大丈夫、もう大丈夫ですよ、千歳様。もう怖くありません。サティがここに居ます。もう大丈夫、です」
「ザディざん……うえええっっ……」
優しいサティさんの声に、アタシはサティさんの胸に顔を埋めて泣いた。
「皆さん、もう持ち場に戻ってください。千歳様は見世物ではありません。戻りなさい」
ただの従者とは思えない、凛とした声で周りの兵士達に解散を告げるサティさん。そうだった、サティさんはもともと男爵令嬢だった。
サティさんの指示を聞いて次々に戻っていく兵士達。
「あっぁうぁ、ち、千歳姉様、ごめんなさい……」
まだアタシに対して謝り続けているマース。アタシはサティさんに抱きしめられ、大分落ち着いてきた。彼にはアタシを余計に怖がらせたことの報いを受けて貰わなければならない、と思ったので、アタシはサティさんの胸に顔を埋めたまま目線だけマースに合わせて言う。
「マース、嫌い……」
「ええええええええええっっっっ!!??」
とんでもない大声を上げるマース。よっぽどショックだったのか、目は泳ぎ、両手を何もない空間にフラフラと漂わせながら身体を右へ左へと振っている。
勿論嘘だ、アタシがマースを嫌いになる訳はない。今回だって助けて貰った、守ってもらった。でもやりすぎはダメだし、相手の気持ちを思いやられないのはダメだと思う。なので今だけ嫌いって言っておく。
「そ……そんな……」
マースは力なく項垂れた。
「ははは、マース様もやりすぎはよくねえぜ」
「そうですよマース様、ミス千歳の気持ちもちゃんと考えませんと」
ショーンとジェームズにまで諫めらている。
「ジェームズ、ショーン、貴方達も戻りなさい」
「へいよー」
「はい、サティ様。では皆さま、失礼いたしました」
サティさんに促され帰っていくショーンとジェームズ。だがアタシは二人に言っておきたいことがあった。なのでサティさんの胸から顔を離し、彼らに向かって声を掛ける。
「ジェームズさん、ショーンさん……」
「うぅん?なんだーねーちゃん?」
「ミス千歳?なんでしょう」
「アタシを庇ってくれて、ありがとう……」
最初から、アタシが悪魔化を始めてマースが駆けつけるまで、アタシを庇ってくれたのはあの兵士達の中でこの二人だけだった。悪魔になったアタシを皆否定して来たけど、彼ら二人だけはアタシを信じて踏み留まってくれた。悪魔になっているアタシに物怖じせず対応してくれた。だから感謝したい。
「へへっ、別に気にするこたぁないぜ、ま、今度一緒に酒でも飲もうや」
「そういうことです、ミス千歳、ではまた」
二人はアタシに手を振って戻って言った。
「サティさん、ありがとう、もう大丈夫、だと思う」
「平気ですか?立てますか?」
そう言ってサティさんは立ち上がり、アタシに手を差し伸べてくれる。アタシはサティさんの手を掴み、ゆっくりと立ち上がった。
ふとマースを見てみると、地面に崩れ落ち、虚空を見つめブツブツと何か呟いている。
「僕嫌い……千歳姉様……僕嫌い……千歳姉様……千歳姉様……」
アタシの小さなご主人様が可哀想になってきたので、そろそろ正気に戻ってもらう。
アタシ地面に崩れ落ちているマースを持ち上げ、そのまま抱きしめ声を掛ける。
「マースも助けてくれてありがとう!嫌いってのは嘘だよ!でもさっきの命令みたいに、怖いのはやめてね?」
「千歳姉様……はっ!?はいっ!千歳姉様っ!もうしませんっ!さっきの命令はもうしませんっ!」
正気に戻ったらしい元気に返事してきたマースを降ろす。彼の顔を見てみれば、ぱあぁっと明るく元の優しいマースに戻っていた。ちょっと涙目だけど。
「マース、それでね……」
アタシはマースに悪魔化の解除を頼もうと膝立する。するとセリフの途中でマースが察したのか、
「悪魔化の解除ですね!?いきます!1、2、3、終わりですっ!」
マースがささっとアタシの腹、胸間、口元目掛けて人差し指をクルクル回し、アタシの悪魔化を解除した。
-パキィィンッ-
ガラスの割れるような音と共にアタシは人間体に戻る。
「ありがとっ、マースっ」
「いいえっ、お安い御用ですっ」
アタシを見上げ元気に返事してくるマース。そんなマースの顔を見つつ、アタシは思う。
(悪魔化の解除、マースに頼りっぱなしじゃダメだよねぇ。フライアみたいに自在に人間に戻れるようにならないと)
フライアに言われた、今日一日の予定。そこで自力での悪魔化の解除を習得することを改めて心に決めた。
「そうだ、サティさん、お願いがあるんですけど」
アタシは隣で佇むサティさんに向けてお願いをする。
「千歳様、どうしました?」
至って普通なテンションでアタシに聞いてくるサティさん。
(今日のサティさんは落ち着いている。好き。昨日のテンションがおかしかっただけなんだろうか?)
などと余計な事を思いつつ、サティさんに頼む。
「この長い髪がちょっと邪魔で、出来ればショートボブ……マースくらいの長さに切ってほしいんですけれど、誰かに散髪をお願いできませんか?」
アタシの髪は、昨日サティさんを襲って悪魔化してから、腰まで伸びる貞子みたいなロングヘアになっており、非常に邪魔くさかった。アタシの髪はもともとベリーショートだ。こんな長い髪は動きにくくてしょうがない。なので切ってもらいたかった。長さはベリーショートにしてもらってもよかったのだが、どうせまた悪魔化したら伸びるし、せっかくだからマースと同じ髪型にしてみたかったので、ショートボブ、おかっぱ頭を希望した。
「では私が切りましょう!はいっ!サティが切りますっ!千歳様ぁ!」
どこからかハサミを取り出したサティさん。そのままテンション高くアタシに抱き着いてきた。
(うん、このテンション、やっぱサティさんだわ。危ないからハサミ持ったまま抱き着くのやめてほしい)
呆れ顔でそんな事を思いつつ、アタシはサティさんに髪を切ってもらうのだった。
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