プロローグ3
◇
「金が……ない。」
財布をひっくり返して出てきたのは銅貨が二枚と紙の切れ端、それにどこのものか分からない硬貨。アランはくたびれた財布を放り出し、ガタついた玄関ドアを勢いよく開ける。
特に金策があるわけではない。ただ、このまま働くこともなくボロ屋でだらだらとしていると碌でもない末路を辿るのは確実だった。
「仕事がないから金もない。ついでに働く気もさらさらない。ただ、野菜ジュースが飲めないのは困る。凄く困る。」
アランは簡単にこなせそうな依頼がないか探すために冒険者ギルドへと足を踏み入れた。分厚い木の扉を隔てた向こうから、いつもの喧騒が聞こえてくる。依頼前か依頼後なのか、泥酔している男達。痴話げんかを起こしているパーティー、それを冷やかす野次馬達。まだ午前中だというのに漂ってくる濃い酒の匂いに顔をしかめながら、アランはクエスト掲示板へと向かった。
「…………ませんか?」
アランはパーティーを組んでいない。その理由は色々あるが、まぁ今後も組む予定はないのだから、それを気にする必要は無い。幸い、一人でこなせる依頼もたまに掲示板に張り出される。まったく、ぼっちに厳しい世の中になったものだ。
「……組みませんか?」
掲示板を見る気が散る。それはさっきから視界の端でちらちら動くものがあるからだ。そこでようやくアランは隣でせわしなく動く何かの方を向いた。そこに居たのは小柄な少女。アランが自分の方を向いたことを知った彼女は開口一番こう言った。
「私とパーティーを組みませんか?」
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