苦り済ます
バブみ道日丿宮組
お題:不幸な始まり 制限時間:15分
苦り済ます
過度なストレスは健康に害を与える。
そういうことなので、嗜好品に手を付けた。
お酒、ギャンブル、タバコ。
金がすごい勢いでなくなった。
でも、なんだか楽しかった。なくなってくのが自分の命のような気がして、はかないなってそう思った。
目を覚ますと、そこは知らない場所だった。
起き上がり詳しく調べようとするが、身体が思うように動かなかった。
これはかなしばりというものなのだろうか。
「生きるか死ぬかどちらがいい」
その声の主を探した。
視線だけはなんとか動かすことができたので、見える範囲はとりあえずみた。
いない。
「蘇りというのもあるな」
口は動かない。
「心で念じれば、伝わるよ」
テレパシーというやつだろうか。そんな特殊能力に目覚めた記憶はない。
「本人が持ってなくても、相手が持ってるということはあることだよ」
誰なの? なんで見えないの?
「それは見ようとしてないから。皆心のなかでそういったものを持ってる」
見ようとしない……そんなことはあるかもしれない。
嗜好品によって、消えないものを消そうとした。
当然それは消えない。残り続けて、僕の身体を痛めつける。
「どちらがいい?」
何もなく死ねるならそうしたい。きれいに治るなら生きたい。
「生きてもいいことはないよ。辛い現実がまた襲ってくるだけ」
じゃあ選択肢は一つしかないじゃないか。
「3つだよ。生まれ直すか、そのまま生きるか、死ぬか」
それら以外はないのだろうか。
「ないね。そんな便利な世界はありはしない」
すぐに選択しなきゃダメなの?
「3日待とう。そのときにもう一度くる。そのときまで考えて」
わかった。
数分後、視界に医者の姿を見た。
「脊髄をダメにしました。もう身体は動かせません。声も麻痺ででません。治療方法もありません。どうしますか」
何をどうするというのだろう。
答えることもできないなら、どうやって言えばいいのだろう。
「研究サンプルになるか、永眠するか。選んでください」
同じようなことをさっき聞いた。今度はこっちの思考を送れないパターンだが。
「わからないでしょうし、研究サンプルにしましょう」
医者が笑った。
「すぐに四肢を切断しますね。大丈夫。もう不要なものですから」
そうして、謎の声の主がもう一度現れる前に僕の身体は最低限の内蔵のみだけとなった。
苦り済ます バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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