魔法学園の万能地術師
ムネミツ
第1話 地味な学生グラン
「おはよう、グラン君♪」
「何ですか、生徒会長?」
上下黒の学生服を着た短い茶髪の少年グランは、朝から教師に押し付けられた校舎裏の壁の補習と言う雑務中だった。
そんなグランに声をかけたのは、同じく黒い学生服を纏った金髪ショートボブな髪の胸が豊満な美少女だった。
「属性と同じで堅苦しく呼ばないで♪」
グランに生徒会長と呼ばれた美少女、アニー・メリーが訂正を求めた。
「わかったよ、アニー」
グランは照れくさそうに生徒会長を名前で呼ぶ。
「うん、そこは愛しい婚約者のアニー♪ って、言う所じゃない?」
「勘弁してくれよ、俺は地味に学生生活を送りたいんだ」
グランはこの年上の婚約者に翻弄されていた。
「駄目よ、君は生徒会長である私専属の助手であり婚約者なんだから♪」
アニーは太陽のような笑顔で駄目だと言う、グランはそんなアニーが好きだった。
取り敢えず魔法で壁のひび割れなどを一瞬で直すグラン。
「そうは言っても、お前が呼ぶトラブルは毎回大変なんだぞ?」
「私達二人なら解決できるわ、仕事が終わったら生徒会長室へ行きましょう♪」
アニーがグランの手を取り引っ張て行くので、グランは付いて行く。
周囲の学生はその様子を男子は羨み、女子は微笑ましく見守っていた。
廊下を通り、生徒会長室と書かれた部屋のドアをアニーが開ける。
「さあ、朝の授業はないのはわかっているから一緒に朝ごはんにしましょう♪」
その部屋は、小さく狭い二人のリビングと言う具合の部屋だった。
アニーが生徒会長室の魔法冷蔵庫から、トマトとレタスのサラダと牛肉が挟まった
サンドイッチの載った皿を取り出してテーブルの上に置いた。
「アニー? 何でお前が俺の行動を把握しているんだよ?」
「会長と婚約者の両方の権限です♪」
「権力の悪用って言うんだぜそれは?」
「第十王女何て肩書きを可愛く利用しただけです~♪ それより、ご飯♪」
牛乳と二つのペアのマグカップを取り出すアニー。
「うん、王女様には勝てないね
グランが更に触れて魔法を使うと、サンドイッチがトーストになった。
「流石グラン、万能の
グランの魔法を褒めるアニー。
「ありがとう、そっちも超特化型の
礼を言いつつアニーも大概な奴だと言うグラン。
「ええ、太陽すら生み出せるから♪ 私が太陽であなたが大地、二人は互いに通じ合う間柄♪」
「大地は太陽の光と熱を受け、夜はその熱を天へと返すって奴か」
「夜だけじゃなく、昼間もあなたの熱を私は欲しい♪」
アニーが大げさに両腕を広げる。
「はい、大地の熱」
グランはトーストをアニーの口へと差し出すと、アニーは不満そうにトーストを咥えて素早く食べ切った。
「む~、わざとでしょ?」
「お前が何時も俺をからかうお返しだよ」
「お返しならキスとかでしょ~?」
「わかった、じゃあそうする」
グランが素早く席を立ち、アニーに近づくと彼女の唇にキスをして抱き締める。
しばしの時が過ぎ、二人は離れて朝食のトーストを食べ終える。
「……グラン、愛してる♪」
「……俺も、絶対アニーを誰にも渡さない」
「うん、私もグランを全力で渡さないからね」
「ああ、何度でも約束する♪」
グランとアニー、二人はこれまでも色々な妨害を乗り越えて来たほぼ無敵のカップルであった。
二人の家は互いの祖父の代から付き合いがあった、グランの家はアニーの家が国を興す際に尽力した建国の立役者であった。
アニーの祖父は功績に見合った爵位などを提示した。
だがグランの祖父が求めた報酬は、最低限の領地と爵位。
そして両家の友情と、子孫同士の婚姻の自由であった。
グランの家は爵位は男爵ではあるが、宮廷では王の相談役と言う地位を得ていた為に孫同士であるグランとアニーは幼い頃から交流があった。
グランが魔法学園に入学した際、アニーは一学年上であった。
入学式を終えてこれからグランの学生生活が始まると言う頃、最初の揉め事が起きた。
「グラン・アースマイト、決闘を申し込む!」
グランを校庭に呼び出して手袋を投げて来たのは上級生の男。
柄に宝石が嵌った剣を持つ、いかにも貴公子然とした美男子だ。
「決闘の理由はアニー先輩ですね?」
「そうだ、僕は貴様を認めない! 剣を取れ!」
剣を抜き、グランに突き付けた男。
「いりませんよ、
グランの左腕が瞬時に、電気を帯びた緑色の結晶の籠手で覆われたかと思えば
素早く放たれた拳の一撃で男の剣を粉砕した。
「ば、馬鹿な! 僕の魔剣が一撃で粉砕だとっ!」
自分の剣を粉砕された男が驚いて固まる隙を、グランは見逃さなかった。
「二撃目行きますっ!」
再び振るわれたグランの拳が男の胸を撃ち、男は衝撃と電撃でダウンした。
後日、報復を目論んだ男が手下を使って学園を種撃して来た。
「グラン・アースマイト! 貴様だけは許さん!」
「坊ちゃんを怒らせたのが運の尽きだぜ~♪」
棘付きこん棒やナイフで武装したごろつきを従えた男が、グランに手下をけしかけようとした時
「全員ただの悪党でしかないし迷惑なので、一気に
グランが地面に手を付けると、男と手下達は瞬時に全身が石化して最後には全員が牢屋送りとなった。
男の家はこの不祥事で取り潰された。
グラン本人は地味な学生と言う要望だったが、その実力はこの件で認められた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます