家賃を取りにイラストレーターの家に行ったら、相手が全裸リボンで待機していた。
椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞
「プレゼントは、私です」「いや、家賃を……」
二〇六号室のキミエさんの元へ伺ったら、全裸リボン姿で迎えられた。
「プレゼントは私です」
いや、ボクは家賃を払ってもらいに来ただけなのだが……。
キミエさんは自称イラストレーターで、ここに越してくるなり家賃を一ヶ月滞納をしていた。
管理人である母親の代わりに、ボクが家賃をもらいにココへ来たのである。
「寒いので、上がってください」
玄関を開けっ放しだと辛いらしいので、ボクは部屋へ上がらせてもらう。
「コホン。事情をお聞きしましょう」
「あまりにニッチなイラスト作業動画を配信していたら、収益化を剥奪されました」
「よくあるそうですね」
「過激な内容ではなかったのですが」
「終始無音だったせいでは?」
妙な理由で、動画配信の収益がもらえなくなったのだという。
「スパチャも飛ばなくて」
「あー。過疎ったんですね」
ファンが離れてしまったのだろう。
「どうも新規開拓に躍起になりすぎて、従来のファンが逃げてしまったみたいで」
「で、収入がなくなってしまったと」
「あと一ヶ月、待ってほしいのですが」
「一ヶ月以内に家賃を見込める保証は?」
顔そらしやがった。
「とりあえず、服を着ませんか?」
「サービスです。このままで」
どんなサービスなのか?
「いいでしょー。今どき無課金で女性のハダカがこんな間近で見られるなんて。家賃をカガンしてくれたら、ガマンしなくていいですよ?」
たしかにうれしいが、こんな形で見たくはなかった。
「えらいベタな方法で、言い逃れしようとしましたね?」
「思春期の男子なら御せるかと」
ボクはたしかに思春期だが、理性は保てている。
「妙ですね。私、コスプレもするんですが、結構ファン付くくらいなんですよ? まったくなびきませんか?」
キミエさんは、たしかに魅力的だ。
それなりにプロポーションもあって、顔立ちもいい。
でも。
「もしかして、好きな子がいます?」
ボクは、何も言わない。
「……耳、すっごいことになってる」
キミエさんの顔が、近づいてきた。
「しかも、私では、ない」
さらに、キミエさんがすり寄ってくる。
「彼女を裏切りたくないから、理性を保っていると。かわいい。義理立てしてるんだ」
耳元で、悪魔がささやいてきた。
「関係ないでしょ。家賃払ってください!」
ボクは、キミエさんにお手のように手を出す。
家賃の代わりに、柔らかい感触が。
「う、ぐ……」
ボクの手は、キミエさんの胸を包み込んでいる。
「内緒にしておいてあげるから、見逃して」
「ぐ、くそ……」
ボクは、本能にクッしようとしていた。
そのとき!
「ちょっとお姉ちゃん!? 田中くんを口説いてどうする気!?」
メガネポニーテールの少女が、玄関を開けて怒鳴り込んでくる。
「え、大場さん?」
「ごめんね、田中くん。家賃だよね? はい」
大場さんから、ボクは家賃を受け取ることができた。
「二人は、どういう関係?」
「実の姉妹だけど?」
絵描き志望を反対されて、大場 キミエさんは家を飛び出したという。
そういえば、キミエさんも大場さんだったな。
紛らわしいから、ペンネームの「キミエ」さんって呼んでいたけれど。
たしかに、二人はどことなく面影がある。
「ホントごめん! お姉ちゃんがバカで! もうお姉ちゃんもあやまって!」
キミエさんが、大場さんに頭を下げされられた。
「い、いいよ。家賃さえもらえたらOKだから」
「また、困ったことがあったら言ってね。家賃はこっちが手配するから。ウチの母だって、全面反対ってわけじゃないから、あたしに様子見なんてさせてるし」
何度も手を合わせて、大場さんはペコペコする。
だが、キミエさんはさっきから、何かを察したような顔をしていた。
「また、耳が赤いままですよ?」
「ボクは、別に!」
「プレゼントです。妹の何が知りたいですか?」
家賃を取りにイラストレーターの家に行ったら、相手が全裸リボンで待機していた。 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2
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