冬のある日のこと

野口マッハ剛(ごう)

Aさんという男性 ホラー小説

 びゅうびゅうと冷たい風はAさんの体温を奪うかのようだ。

 こんな時に恋人が居てくれたらなあ。

 そんなことをAさんは考えている。

 Aさんは会社の帰りの途中である。すっかり外は暗いのだ。

 電車を待つAさん。

 駅の中もびゅうびゅうと冷たい風が。

 Aさんは、後ろから何かにドンッと押される。もう少しで線路に転落しかけるところだった。

 危ないな!

 Aさんは後ろの方を見る。

 怪しそうな人は居ない。それどころか、周りから白い目で見られていたAさん。

 なんなんだよ?

 Aさんは奇妙に思いながら電車に乗った。

 満員電車である。

 Aさんはなんとか席に座れた。

 しかし、右隣のところには誰も座らない。

 満員電車なのに。

 Aさんは不思議に思いながら電車から降りる。

 そう言えばAさんは残業を持ち帰っていたので、あるカフェでその残業の仕事をする。

 なぜか、カフェの店員が二つの水の入ったコップを持って来た。

 Aさんは不思議に思って店員に一つコップを返した。

 すると。

「あれ? そこにもう一人居ますよね?」

 それを聞いたAさんは向かいの席を見るも誰も居ない。

 Aさんは気味が悪くなって、カフェを急いで出る。振り返ってカフェを見てみた。見知らぬ女性が冷たい笑みを浮かべている。

 Aさんは急いで、自宅に向かう。

 びゅうびゅうと冷たい風が。

 Aさんは恐怖のあまりにどうかなりそうである。

 Aさんが自宅の前に着いた時に、あの見知らぬ女性が右隣のところに立っている。

 見知らぬ女性がぶつぶつと何かを言っている。

 Aさんは恐怖のあまりにどうかなりそうで、その見知らぬ女性の声になんとか聞くことが出来た。

「見えてないの? 見えてないの? 見えてないの? 見えてないの? ねえ、見えてないの?」

 Aさんは勢いよく自宅に入った。

 なんなんだよ? 今の?

 上から髪の毛が垂れてくる。

 玄関の天井を恐る恐る見るAさん。

「ねえ、見えているんでしょう?」

 その場でAさんは気絶した。

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冬のある日のこと 野口マッハ剛(ごう) @nogutigo

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