第7話

 次の日は旅行始まって以来の記録的な大雨だった。

 旅館の窓を叩きつけるような激しい雨音に父さんとお母さんが難しい顔をしていた。


「うーん。今日はどこへ行こうか?」

「あなた……プラネタリウムや水族館なんてどうかしら?」


 旅館のカウンターでチェックアウトをしているお父さんとお母さんは、この町には何があるのかと観光名所を聞いていた。


「それなら、お寺なんてどうでしょうか? こんな雨ですものねえ。そのお寺では精進料理が美味しくて有名なんですよ」


 旅館のお姉さんの声に、私はお寺なら車の中のおしゃべりな髑髏も大人しくしているだろうとチラッと考えた。


「お父さん! お母さん! それがいい! 私、お寺に行きたい!」

 

「始まりの物語はいらんかね~。始まりの物語はいらんかね~」

 

「うん? あんた何言っているの?」


「どうした? 始まりの物語って……?」


「ううん。なんでもないの」


「あれ? なんだか……私……聞いたことがあるわ。確か、昔に……親戚の家で……」

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