変人だと認める彼と彼が変人で良いと思う私

シヨゥ

第1話

 1人が好きで、独りが嫌い。誰かに振り回されるのは嫌いだけれども、誰かに側にいてもらえないと心配になる。そんなわがままな性格をしていると自分のことながら思う。

「いる?」

「ああ」

 そんな私を理解して付き合ってくれている彼がいる。決して自分からは話しかけてこないし、こちらの行動に干渉してくることもない。もし私が盲目だったら彼の存在を認識することはできないだろう。それぐらい気配を絶つことに長けた彼。

「これから夕飯買いに行くんだけど」

「行こう」

 口下手で、コミュニケーションを取るのが苦手な結果、誰にも気づかれないよう気配を絶つことを覚えたらしい。

 私が先に外に出ると準備が出来た彼が足音を殺して静かに走ってきて横に並ぶ。

「魚の気分」

「了解……焼き魚」

「煮魚の気分」

「了解」

 希望っぽいことを言うけど、別に何でも構わないらしい。そんな彼だから私の意見を否定したことはない。

「選んでみたいと思ったことはないの?」

 わがままを通しておいてなんだけれども聞いてみたくなったので質問してみる。すると彼は特に表情も変えずに、

「選ぶのって疲れるから」

 と答えてくれた。

「疲れるのが嫌だから私の意見を受け入れてくれているの?」

「そうだよ。選んでくれるならそれがいいんだ。選ばせてくれなくて本当にありがとう。そう毎日思っているよ」

「変なの」

「そうかな?」

「変だよ。でもだから私たち長く付き合えているんだなと思ったよ」

「なら変で良いよ」

「私、変人と付き合っているのか」

 それでもいいと思う私がいる。変人だと認める彼と彼が変人で良いと思う私。奇跡的に釣り合いの取れたカップルなんじゃないかと思えてきた。

「笑ってどうしたの?」

「いや、君が変人で良かったと思って」

「ありがとう?」

「こちらこそありがとう」

 彼との歩みはまだ続きそうだ。1人が好きで、独りが嫌い。そんな性格を抱えても幸せに生きられているようでなんだかホッとしたひと時だった。

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