終章 友愛
4—1
ヒロタクと部長は友野とはぐれた後、白蛇神社へどうやって戻ったらいいかわからずにしばらく林の中をさまよっていた。
日が落ちる少し前に、なんとか林を脱出した二人が歩いていると偶然にも脱出したその場所が、修が住んでいた家のすぐそばだったのだ。
家は空き家になっており、庭に売り家の看板が立てられていて、その看板の柱に逃げ出した白蛇は巻きついていた。
「こっちこっち!!」
ヒロタクが興奮気味に手招きし、友野と北山が庭へ行くと、赤い瞳と目があった。
間近に見た蛇は噂通り大きな白い蛇で、体長二メートル以上は確実にある。
「おお!! すっごい強そうなおっさん連れて来たな!! ナイスだ友野!! あんなでかいの、俺たちだけじゃどうしようもなくて……」
ケージを持って友野と一緒に現れた北山を見て、これで捕まえられると安心するヒロタクと部長。
確かに、見た目だけなら北山は屈強な男で、蛇なんて恐れそうもない顔をしている。
だが……
「ヒッ!」
蛇が北山の方に顔を向けた瞬間、情けなくも短く悲鳴を上げてしまう北山。
あまりに頼りない。
「…………とにかく、相手は一匹だ。たった一匹の蛇だ。捕まえるぞ」
友野が呆れながらそう言って、四人で協力してなんとか蛇を捕まえ、ケージの中に押し込めた。
* * *
神社に戻り、友野たちは急いで蛇を元の場所に戻してもらった。
何やら儀式をするため、社務所で待っていてくれと神主に言われたので東のいるところへ行くと、そこで先ほど見つかったという絵を見せられる。
「これは……」
白蛇神社の看板にもパンフレットに載っている内容とも違う、二匹の話。
折られて、隠されていたのが本当の話なのではないかと東は言った。
「さっきのあのボロい神社————黒蛇神社ってことは、神が祀られてるってことだろ? この立派な白蛇神社とは違って、あっちはずっと放置されていて、酷い有様だった。何かの原因で、歴史から消されたんじゃないのか?」
「確かに……そうかもしれませんね」
黒蛇も白蛇とともに子供を育てたのに、なぜか白蛇だけが子供を育てたことになっていて、黒蛇は何もしていないことになっている。
それに、看板には白蛇様は『正義と金運を司る』と書かれているが、出てきたものでは『愛と金運』となっており、『正義』を司っているのは黒蛇様の方だ。
「これ……この女の絵!」
そこへ、白蛇を運ぶのを手伝った北山が戻ってきて、絵を覗き込んで言った。
「こっちの白い髪に黒い着物の女、あの時、蛇を捕まえてくれたお姉さんに似てる……!! それに、こっちの黒い髪に白い着物の方————俺が夢で見た人面蛇にそっくりだ!」
「…………あ」
そこで、友野も気がつく。
北山が人面蛇にそっくりだと言った、この黒髪の女————少女の守護霊に憑いている神とよく似ている。
「え……なんでござるか?」
突然、友野の視線が絵から自分の方に移動して、少女は驚いて首をかしげる。
残念なことに自分の守護霊は、この妖怪や霊やらが見えている少女であっても見ることができない。
だから、自分に憑いているものには気つけないのだ。
ヒロタクと部長は、急に黙ってじっと少女の後ろの方を見ている友野が、また何かを見ている————見えているのだと気がついて、羨ましそうに言った。
「いいなぁ、友野……あの子になんか憑いてるの見えるんだろ?」
「本当、お前のその目、一度でいいから交換して欲しいぜ——……」
どんなに羨ましがられようと、友野は全く嬉しくない。
自分に見えている世界は、決して、気持ちのいいものでも、自慢できるようなものでもないのだから————
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