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友野は、目撃者たちの動画の視聴履歴の中から、共通したある一つの動画を特定する。
それは、あのほとりの森公園で撮影されたものだった。
池周辺までの道のりを映し、小声で会話しながら進んで行く。
池の水の音が少し聞こえたような気がするとか、風が吹いたために林の葉音が聞こえたりしたくらいで、特に変わった現象は起きなかった。
一人目の目撃者である最上愛里は、この動画のチャンネル登録をしており、公開されたその日にこの動画を見ている。
そして、その公開日というのが、彼女があの大雨に混ざって鼠が降って来たのを目撃したその日だった。
二人目の佐藤も、この動画を視聴したすぐ後にあの怪奇現象に遭遇している。
三人目、四人目も、この動画を見た後に目撃していた。
しかし、この動画の再生回数は現時点で二千回を超えている。
二千回も再生されているのに、目撃者が四人しかいないのはなぜか……
隼人のSNSにも、三人目までの情報しか届いていない。
「動画を見ること以外に、何か条件があるのか?」
友野はそう呟きながら、改めて四人の目撃者の情報を見つめる。
年齢、性別、住所、勤務先……————
「共通するもの……共通するもの……」
四人目の男性タレントの住所は、あのスーパーの近く。
しかし、では三人目の共通点は?
「スーパー……金曜日…………もしかして————」
友野はスーパーの店長に電話をかけた。
「すみません、店長。一つ、お聞きしたいのですが————…………先月辞めたという、あの女性スタッフの連絡先は、わかりますか?」
♢ ♢ ♢
東と南川は、友野に言われた通り龍雲斎を調べ始めた。
「龍雲斎。本名は
資料によると、龍雲斎は若い頃にやんちゃをしていたらしく、趣味はドライブで、車の運転はプロ並み。
心霊系番組で稼いだお金のほとんどは車につぎ込んでいる。
サングラスと鍛え抜かれた体型のせいで、外見はヤクザっぽいと言われることが多いが、話してみるといい人だというギャップで、一部オカルトファンの間から絶大な人気を得ていた。
「うわー……この車、約二千万円ですって!!」
龍雲斎の最近のSNSを辿っていた南川は、高級車の前で撮られた写真をみて、自分の仕事って一体……と思えて来ていた。
こんなに毎日ほとんど徹夜で頑張っているのに、なんだか悲しくなってくる……
「何を見てるんだバカが! 値段は関係ないだろう!!」
いくら友野に龍雲斎が怪しいと言われても、なにかしら証拠がなければ捜査はできない。
任意で引っ張ってくるとしても、それなりの何かがなければ……
「龍雲斎があの現場で撮影したのは、遺体が発見される二週間以上前だろう? 死亡推定時刻とも合致しないし、自宅からも離れているぞ? 本当に、関係あるのか?」
「うーん……それはわかりません」
遺体が発見されたのは、今月の三日。
死亡推定時刻は、二日の夜前後だ。
「あれ……?」
「どうした?」
南川はあることに気がついた。
「先月の初めに買ったばかりの新車、今月は一度も乗っていないみたいです————この赤いセダン」
「だから、車の話はどうでも……————いや、待てよ? 赤のセダン?」
東は捜査資料をもう一度読み直した。
聞き込みをした際、二日の夜に動画を取りに若者たちが立て続けに来ていて、その中に一台赤色のセダンがあったという証言がある。
しかし、路上に駐車されていた車はたくさんあったし、誰のものかまでは判明していない。
そもそも、目立つ赤い車で犯行に及ぶはずがないということで除外されていた。
「南川、周辺の防犯カメラの映像を確認だ……!」
「は、はい!!」
友野のおかげで、殺人事件の方も解決へと動き始めた。
そして、そこから、ある一人の人物が浮かび上がってくることになる————
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