始まり

エピソード1:はじめての無人島

 身長よりも少し長くて頑丈そうな流木を四本集め、地面に差し込み家の枠を作る。 

「なんか、思った以上に頼りない感じになったかも」

 しかし、日がだんだん落ちてきていた。

「せめて、ここで雨風をしのげるぐらいの環境を整えておかないと!」

 彼女はそう言ってまた、浜辺へと走っていった。

 次に集めたのは葉がたくさんついた細い木だった。

 手にいっぱい木を持ってある程度多くなったら、先ほどの木の柱の上に乗せていった。

 途中で崩れたり、風で飛んでいったりしていたが夕暮れの時には屋根が完成した。

「あ~、本当に疲れた」

「でもあと、火も起こさないと!」

 はたしてどうやって火をつけるのか、そもそも間に合うのか。

 彼女は周囲にあった大きめの石を丸く並べ、その中にいくつかの枝木と枯れた葉っぱを入れた。

 この時にはもう周りも暗くなり、手元がよく見えない状況だった。

 彼女はポケットの中から小さいライターを取り出した。

 どうやら、どこからか拾ってきたか元々持っているようであった。

「頼むからいてくれ~」

 手元から細い火花が散ると、小さな火がともった。

 そして、葉っぱに近づけた。

 沈黙の時間が続く。

 火はなかなか葉っぱに移ろうとしなかったが、ちょっとずつ葉っぱの焦げた臭いが漂ってきた。

 そして、ライターの火がだんだん弱り始める。

「お願い!」

 すると、その願いが届いたのか葉の先端から赤く輝き始める。

「やったー!」

 最初の火は徐々に他の葉っぱや枝に引火していき、見事にたき火をすることができた。

「これで、どうにか一晩は過ごせそう!」

 その喜びも束の間。

 一安心した瞬間、空腹の音がなる。

「お腹、すいたな~」

 手元には食べられるものがなく、困っていた。

「こんな暗いのに、今から食料調達するなんて危険すぎるよ~」

 彼女は嘆いていた。

「今日は早めに寝て、明日の早朝に行動しよ……」

 そう言って、たき火に手元の枝木すべて放り込み。

 地面に横たわり、そっと寝た。

 風と海の音が鮮明に聞こえる。

 そこに一つの不自然な草木のざわめきが聞こえた。

 まるで、何かが通ったような………

 彼女はすぐに立ち上がった。

「誰かいるの?!」

 周りを見渡すが誰もいない。

 しかし、どこかの草に隠れて移動している。

「猛獣とかだったらどうしよう……」

 徐々に音が近づいてくる。

「ヤバい、何か持たないと!」

 彼女は近くの大きめの小石と枝木を持って身構えた。

「来るなら来い!」

 まるで、小学生のお遊びかのような装備でどうやって戦うのか。

 考えてうちに、茂みの揺れが近くなってくる。

「うりゃ~~!」

 出てきた瞬間を狙って手に持っていた石を投げた。

 投げたその石は放物線を描き、目標へと向かっていく。

「やったか?」

 木の枝に火をつけて、ゆっくりと近づいていく。

 足音をかき消しながら、ゆっくりとゆっくりと………

「………」

 投げたであろう石の場所には、深く掘られた地面があり周りには砂が飛び散っていた。

「逃げたかな?」

 しばらくずっと、辺りを警戒していたが、特に草木のざわめく音は聞こえなかった。

「よかった。これで安心して寝れる」

 そして元の場所に戻ろうとした時。

そこには一匹のウサギがたき火の近くに座っていた。

「なんだ、ウサギじゃん。 怖がらせないでよ」

 そのウサギをゆっくり撫でた。

「一人だと寂しいから助けに来てくれたんだね」

「ありがとう~」

 語りかけた言葉に反応することもなく、ウサギはたき火の前でぐっすり寝ていた。

 こうして、彼女はウサギと一緒に寝た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る