真夏の夜に現れた天使
石川タプナード雨郎
第1話 出会い、そして追憶へ。
この物語の自分は、当時19歳のフリーター。身長174で中肉、体重70キロくらいかな。特にイケメンでも無く、学生時代はモテた試しなどない。かと言ってブサイクでもないから普通な部類だと思う、まあ自己評価だが。そんな自分が体験した不思議な体験を話そうと思う。当時高校卒業して就職した建築の会社を辞めてふらふらしていた私は手っ取り早くバイト代が入る深夜勤務の交通警備員をしていた。バイトを始めて三ヶ月くらい経った頃だろうか、四車線の一車線を封鎖して行う電線の工事の警備をしていた時の事だ。夜も更けて深夜12時前になると交通量も少なくなり、立ちぼうけする時間が長くなり、ひと段落ついて工事が終わるのを待つだけだ。警備をしていた場所は市内の中心近くで深夜帯の時間でもライトが多いのもあって結構明るい。そんな時、歩道寄りに立っていた私の横辺りで自転車に乗った大学生位の女性が自転車を止め、跨ったまま前のカゴのカバンを探り始めた。何かを取り出そうとしているのかな?何してんだ?と思いながら見ていると、その女性が招き猫みたく、こちらを向いて手招いているではないか。まあ酔っ払いとかでは無さそうだし近づいてみると、白と黒のボーダー柄のロンTでポニーテールな可愛い女性がではないか。手を出してとは言われたかどうかは定かではないが、私は手を出した。そして掌に110円を彼女は置いた。そして、 これでジュースでも買ってください!お仕事がんばってください! といって自転車で走り去ってしまった。あまりの突然の事で茫然と立ち尽くしている自分がいた。走り去る方を見ると自分の警備の相棒も居たのだが相棒には何もせずに、見えなくなってしまった。あれはなんだったのだろう?そりゃパッと見が凄いイケメンなら女性の目に留まってそういう事も、ありえる話だが、自分はまかり間違ってもイケメンではない。勿論面識などないし初めて見る女性だった。ジュースでも買ってくださいと言われたが、当時使えなかったな~その110円。封筒に入れたのを覚えているから今も押し入れのどこかで大切に眠っているだろう、もう110円ではジュースは買えない時代になったが、今でもたまに思い出す、19歳の蒸し暑かった真夏の淡い出来事だった。 完。
真夏の夜に現れた天使 石川タプナード雨郎 @kingcrimson1976
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