第59話 ルークの想い

 ルークは自分のイリューリアへの気持ちを恋と認識し、照れつつもイリューリアに想いを伝えねばと思っていた。


 そして、それ以上にイリューリアにとってどうあることが一番幸せな形だろうと模索していた。


 彼女がもし、自分を望んでくれるなら勿論、将来を約束し共にありたいと思う。


 しかし、彼女がこの国にいたいと望むなら…。


 自分はラフィリルの第二王子でしかも聖魔導士…。

 祖国を捨てることが出来るのか?と、考えてみる。


 ルークの胸のうちに答えはあっさり出た。

「まあ、別にいっかぁ…」である。


 幸い兄の王太子がいるから国を継ぐ心配はないし自分がこの国に来てもよい。


 問題は必死で修行を重ねてきて成り得た魔導士をそう簡単にやめる訳にもいかないが、そちらは、さてどうしたものか…。


 そして、ぽんと、手をうち、一人でうんうんと頷く。


 修行は、どこでも出来るし、いざとなったら、魔法で転移して毎日ラフィリルに通えばよいか…という考えに至ったのだ。

(ルークは、自分でも知らなかった事だが、とことん尽くすタイプだったようである)


 いやいや、先走ってはいけない。

 まずイリューリアの気持ちを確かめて…等と思っていた。

 あくまでも彼女が、の話である。


 彼女が、嫌がる事はしたくない!


 とりあえず、嫌われていない事は確かだ。


 心の読めてしまうルークではあるが、言葉になっていない気持ちまでもは、明確な判断ができない。

 人の心は幾重にも層を成し、うつろいやすく本人ですらわからないことも多いのだ。


 慎重になるのは、当然だ。


 だが、漠然と自分への感情が好意的であることは分かっているのである。


 しかし、ザッツ将軍やローディ王子も気にしていたことだが、昨日の晩餐会だけでもイリューリアに目を付けた若者は少なくはないだろう。


 ああいう穢れた連中が、押し寄せる明日の園遊会からどうやって無垢なイリューリアを傷つけないように守るべきか?


 不測の事態も想定し、いくつもの案をひねるルークだった。


 そうして翌日、いよいよ、園遊会の幕開けである。


 前日の晩餐会でイリューリアを一目見た各国の王候貴族たちの反応は、おおむね、予想通りだった。

 園遊会のあとは、求婚者が列をなすだろう。


 皆が、この園遊会で彼女と何とか言葉を交わそうと群れるに違いない。

 中には、彼女の美しさに嫉妬する愚かな女性達も出てきそうだ。


 ルミアーナが若い頃、まだ月の石の主だと知られていなかった頃にも、そういう事があったと思い起こす。


 そのへんも考えて、気を抜かず見守ろうと決意を固くするルークだった。

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