第15話 義母マルガリータ(3)
「まったく、忌々しい!」
そう吐き捨てながら馬車に乗り込みマルガリータは大きなため息をつく。
三年前、あの王子はイリューリアに「大嫌いだ」などと言ったらしい。
激しく落ち込んだイリューリアを見てマルガリータは心の中で大喜びしたものだ。
美しいイリューリア…亡き母エマリアにそっくりだ。
人を疑わない素直なところさえもマルガリータには腹立たしかった。
マルガリータは学院時代、イリューリアの母エマリアと同じ学院に通う子爵令嬢だった。
マルガリータの実家は身分はさほど高くはないものの商売をおこなっており裕福で甘やかされた我儘なお嬢様だった。
その当時、学院の高等部に在籍していたカルム・エルキュラートは女子生徒たちの憧れの的で、その頃王太子だったキリクア・デア・アルティアータと人気を二分していた。
その当時、さすがに王太子であるキリクア様は無理でもカルム様なら妻になれる可能性があるとあらゆるツテを利用し近づき何とかおしゃべり相手をさせてもらえるほどになった頃だった。
学園主催のダンスパーティの役員にあたったカルム様は、あの伯爵令嬢エマリアと出会ってしまったのだ。
カルム様がエマリアに好意を寄せているのは誰の目にも明らかで身分的にも公爵家と伯爵家、申し分ない良縁だとあっという間に婚約が調い、エマリアが学園を卒業すると共に二人は結婚してしまった。
マルガリータはエマリアが大嫌いだった。
その見た目の美しさと分かりやすい優等生ぶりが鼻について仕方がなかったのだ。
何が気持ち悪いって、誰も彼もが彼女の事を褒めたたえるのである。
挙句にあんなに苦労してやっと口を聞けるようになったカルム様の心も何の苦もなく手にしたそんな彼女が憎くて仕方なかった。
そして、そんな時、実家の父から渡された黒く美しい宝石…。
それは、実家の商売で闇取引していたご禁制の『
父曰く、『これは望みを叶える魔法の石だ』との事だった。
そんなものは
そんな
気づけば、その石にマルガリータはいつも自分の不満や憎い相手の事を呪う言葉を呟くようになっていた。
「カルム様の妻の座は私の物のはずだったのに…」と。
そんな”黒魔石”の呪いなどというものが本当に効いたのかどうかは分からないが、エマリアはマルガリータが呪い始めてからほどなくして体調を崩し、じわじわと弱り始め、二年目に亡くなった。
たまたま偶然だったのかもしれないが、いまだエマリアの死因は確定されておらず
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます