第4話
タワー内部での生活。
僕達は、まだ見ぬフロアマスターから一人一部屋(風呂付き)を与えられた。それに加え、三度の美味い食事に綺麗な服。その他いろいろ充実した快適設備。
昨日までとは180度違う生活。
ここは、僕たち下層エリアの人間からしたらリアル天国だった。
「あっ!? ダーリン、ダーリン。聞いて、聞いてぇ。ここって、プールもあるんだよ。ねぇ、一緒に泳ごうよ。可愛い水着もあったし」
「う~ん………。今度…ね」
「え~!! なんだよ、それ。つまんない男だなぁ。一緒に泳ごうよ~。私の水着、ぜったい萌えるからぁ」
友達の笑顔。同じごみ溜めにいた住人たちも皆幸せそうで………。
でも僕は、この状況に素直に喜べなかった。タワーのまだ見ぬ主は、良い人間とは限らない。
こんなことをして、何のメリットがあるんだろう。裏があると考えるのが、普通。
今まで虐げられてきた僕たちは、その事を分かっているはずなのにな………。
どうして、誰も疑問に思わない?
「……遊…ぼ…ぅ…」
ネムの顔。楽しそうに見えたその顔が、今は何だかぎこちない。不安が見え隠れしている。
「うん。遊ぼうか。ネムの水着見せてみ」
「キモ~~」
きっと、みんな気付いている。誰も口にしないだけ。声にすれば、この幸せな夢が覚めてしまいそうで恐いからーー。
急にゲートを開けて、僕達のような輩を招き入れた理由……。ただの気まぐれならいいんだけど。
でももし、これが罠だったら………相当ヤバイ。
次の朝。
僕は、ある人物に呼ばれた。屈強な兵士が常に見張っているので逃げることはまず無理。一際広いリビングで、背の高い美人が僕を待っていた。
「どうですか? ここでの生活は」
「………あぁ…快適過ぎて、退屈してます」
「ハハハ、そうですかぁ! うんうん。良かった、良かった」
女性が手を叩くと、メイドが黒いビニール袋を2つ持ってきて、白いテーブルにその袋を乗せた。
袋を開けると、中から。
「っ!!」
今まで何度か嗅いだことのあるアノ臭いがした。
「あ~、臭い。臭いなぁ」
頭が、2つ転がって出てきた。しかも、その顔に見覚えがあった。
「そうですよ。これは、あの奴隷二人です。まぁ…でも…裏切り者は、死ぬことが決まってますから、こうなるのは当然です」
吐き気を我慢し、悪魔の女に質問した。
「アナタは………僕たちをどうするつもりですか?」
「先ほど、退屈だって言ってましたよね? 実は、私もなんです。毎日毎日退屈で退屈で。だから、面白いゲームを考えたので、暇潰しをしたいんです。アナタと二人で」
「ゲーム?」
「はい! 簡単なゲームですよ」
違うメイドが、大きな透明ガラス瓶を持ってきた。瓶の中には、小さな丸いチョコが、五十個程度入っている。
「もし、『運』でアナタが私を越えたら、一生このタワーでの生活を保障します。お友達も含めてね」
「……負けたら?」
「分かっているはずですよ」
【 アナタだけでなく、全員を今日中に処刑します 】
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