ああ~、どうしようもない俺の人生だったから。第二の人生は俺を捨てた妻ではなく。別れた彼女が良いと思っているのだが。俺の事をタイムリープしてくれた女神も言い寄るから困るのだ!
かず斉入道
第1話 序章(1)
「おい、お前、家の方は決まったのか?」
他人行儀のように自身の妻に問いかけた俺でね。
そんな俺に対してあいつ、妻の奴も。
「うん、決まったよ。だから近日中には子供達を連れて引っ越しをしようと思う」と頷きながら告げてくる。
だから俺は妻に「そうか?」と言葉を返せば。
あいつはまた「うん」と頷くから。
俺は未だ妻から聞いていない新居……と言っても。
今俺達夫婦が会話をしているこの広いリビングがある家ではなくて、大変に小さく、狭い2LDKのアパート……。
そう、この大きな家はね、俺が事業を失敗したがために、35年の住宅ローン内の残り12年が支払いできなくなり売却を余儀なくされてしまい。
俺達家族は家具や荷物を纏め退去しないといけなくなってしまった。
だから俺の妻がこの家を売却し、残りの住宅ローンを返済……。その残ったお金を不動産会社の敷金、礼金にして賃貸物件を慌てて探し、2LDK のアパートを決めてきたみたいだから。
俺は女房の奴に、今後新しく家族で和気藹々と暮らす予定の新居の場所を問いかける。
「おい、お前、今度暮らす家は何処なんだ? 俺はお前から新しく暮らすアパートの位置を聞いてはいないのだけれど。一体場所は、どの辺りなんだ?」
俺は家の妻に苦笑いを浮かべ訊ねる。
「ん? ああ、御免、あんた……。今度から暮らすアパートは今迄のように広い家ではないし。部屋の数も少ないから悪いのだけれど。あんたの住むところはないから住所を教える訳にはいかない」と。
俺の女房……。嫌、妻だった女は、俺へとにへらと笑い誤魔化しながら遠回しに永遠の別れ、離別宣言……。
そう、この家を売却するような男は許さないと五十歳を過ぎたおじさんの俺に今更のように離婚をしたいと告げてきたから。
(えっ! ど、どう言う事だこいつ? 今更……と、言うか? この齢……。第二の人生と呼ばれ棺桶に片足を突っ込んでいる年齢の俺をこいつは鬼のように捨てるつもりなのか?)
俺は自身の脳裏でこんな事を動揺しながら思いつつも。あいつ、もう俺の元妻と呼んだ方がよい女へと平素を装いつつも怪訝な表情で、
「えっ! じゃ、お前は、俺と離婚がしたいと言う事なのか?」
俺は少しばかり荒々しい口調で告げ、訊ねれば。
「うん、悪いんだけどお願い……。離婚届けを押してくれないかな」と告げられ。
「それと悪いんだけれど。私や子供達の事を二度と探さないでくれるかな……」とも告げ、嘆願をされた。
だから俺は、「じゃ、今後お前は、俺に一人で寂しく暮らし、老いて、孤独死しろと言っているのか?」と怪訝な表情……だったか、どうだかも俺自身がわからない顔……。
もしかすると、あの時の俺は年甲斐もなく、今にも泣きそうな顔をしていたかも知れない。
でもね、俺の元女房だった女は、こんな老いて容姿も悪くなった爺の俺に対して愛情の欠片も残ってはいなし。自分達家族が今後老いても、安堵しながら暮らしていくはずだったこの家を売却するような事をした大罪人の俺の事を許すはずもなく。
「悪いんだけれど御免……。どうせ、私も子供達が出て行ったらあんたと一緒で独り身だから一緒だよ……」と。
俺の元妻だった女はにへらと笑いながら告げ。
「あんた、どうしても一人が寂しいのならば、新しい女を作ればいいじゃない。若い時のあんたってナンパが得意だったじゃない」と。
俺にこの女は馬鹿だから四十年近くも昔の話……。昭和と呼ばれた遠いい過去の昔話を告げてきた。
だから俺は元女房だった女へと。
「ふざけるな、お前!」と怒声を吐き。
「お前等は家が決まって住むところがあるかも知れないけれど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます