掌編小説・『ミニチュア』

夢美瑠瑠

掌編小説・『ミニチュア』

(これは「ミニチュアの日」に因んでアメブロに投稿したものです)


掌編小説・『ミニチュア』


「アクアリウム」というものを作りたくて、ネット通販を調べていると、「『アクアリウムの素』ー1000円。」とだけ短く書かれた広告があった。住所と電話番号が付記されているが、販売元も出品者も「不詳」となっている。

「?」私は首をひねった。

そのあとに「※注:この広告は3時間後に自動消滅します」とあって、なんだか興味をそそられたので申し込んでみた。

 三日後に送られてきた「アクアリウム」は、透明な水晶球のような容器に水を注ぐだけの簡単な仕様だった。これで念願のアクアリウムができるらしい。

 ・・・小さい穴から水を注ぐとと内部にごぼごぼ泡が沸き立って、いろんな化学変化?が起きているような気配だった。

 ピカピカっと雷のような光がきらめいたり、小さいが青色の高温そうな炎が揺らめいたり、様々なプロセスが水晶球の中に明滅するのはなかなかの見ものだった。

 「これで1000円か…」と感心するほどによくできたおもちゃだ。

 あるいはおもちゃではないのかな?

 じゃあ何だろう?

 などと考えているうちに地球創世というにはこんな風だったのかな?と思わせるような壮大なミニチュアの自然現象がめまぐるしく展開していった。さながら極彩色の絵巻物、幻燈芝居だった。森羅万象の華々しい離合集散、千変万化…その挙句に、ものの20分もしない間に「星の王子様」に出てくる星のような精巧な、緑の星ができた。そうして、表面には一人の男の子が出現した。

 ナント!人間までできてしまった。すごいアクアリウムだ。私は舌を巻いた。

 「何を始めるのかな?」と、興味津々に観察していると、男の子はこちらを見てニコッと笑い、手を振った。

 さてこれからあばら骨から女性ができて、アダムとイヴの物語でも始まるのかな?私は期待した。

 が、男の子は小さな小さな水晶球を取り出して、なんと!こいつもアクアリウムを作り始めるらしい。

「?」私はいぶかしんだ。「これがほんとのフラクタル」と男の子がふざけてオチになるのかな?そう思ってちょっと私は笑った。

 その時、「うっふふ。ふう」と頭上で大きな声がした。悪い予感がして、私は窓の外を見た。

「!」 

 豈はからんや、そこには「進撃の巨人」よりもはるかに巨大な大男がいる!

 

 そいつは口を歪めて笑いながら目を丸くして僕の部屋の中を覗き込んでいるのだった。 


<了>

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掌編小説・『ミニチュア』 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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