第4話『腰を抜かす』って良く聞くけど、本当に敬虔(←経験の間違いです😅)した人ってどのくらい居るのかな? 因みに私(作者)は3回位あります、

 狭間さんと白樺先輩のふたりを相手にした時でさえ苦戦したのに、12万人もの『変革者イノーヴァー守護使ガーディアン』に一斉攻撃を仕掛けられたら、僕『輪音りんね一生いっせい』の一生いっしょうは、一溜ひとたまりも無く、この世から消え去ってしまう。


 当然武力では敵わない。 ここは交渉で何とか……。


「『暗躍者クリープス』は、誰かに見られていると、この世界に『直接』して来られない……と聴きましたが、それは本当ですか?」

 と僕が聴くと……


「それは本当だ。 ……しかし『暗躍者クリープス』を発見し『直接』前に奴らと目を合わせるのは至難の業だ。 それが出来るのは、狭間さんのような『特級策定者フォーミュレーター』だけだ。 ……当然、俺も出来ない」

 と、広井さんが言った。


 ……僕は心の中でガッツポーズをとった。 


 勝機は我に在りだ!



「それなら僕は『変革者イノーヴァー守護使ガーディアン』の方々かたがたに、取引を申し出ます」


「ほぉ~……どんな取引だい?」


「……『暗躍者クリープス』を寄せ付けない、一種の『お守り』を、皆さんに差し上げる代わりに、僕の身の安全を保障して貰います」


「お守り? そんな物で奴らを撃退出来るなら何の苦労も無いよ!」

 ……と広井さんが初めて表情を曇らせた。


狭間さんが、すかさず……


「輪音くん、広井さんを怒らせたら、あなた本当に殺されるわ! お願いだから謝って、これからは私の指示に従って!」

 ……と言った。



 う~ん……穏やかじゃ無いね。


「一応、その『お守り』をみせてもらおうか……」

 ……と広井さんが言った。


 恐らくこれがラストチャンスだ! ……僕は空中に、ある文字を書いた。


 それは、すぐに実体化した!


 よし! 成功!



 『眼球』が羽を広げ(!)、ひらひらと飛び回っている。


 ……文字にすると不気味だが、実物はコミカルでちょっと可愛い。


「何だこりゃ!?」

 広井さんが、ジャレつく眼球をけながら言った。


 想定外の事態で目をぱちくりさせている狭間さんに……


「眼鏡を外して奴らクリープスに『すき』を与えてみて!」

 とお願いした。


 狭間さんが、恐る恐る眼鏡を外すと……


 僕たちの頭上に、妙な気配がした。 何回か経験した怖気おぞけを震わせるいやな気配だ。 目視出来ないが、間違いない! 『奴らクリープス』だ!


 ……しかし、その気配はほんの一瞬で消え去った。


 僕が作り出した『眼球』の視線を感じて、奴らは『直接』出来ず、スゴスゴと戻って行ったんだ!


 やった! 効果有り!


 


「……ふ~む! これは実に素晴らしい『お守り』だ!」


 ……と、広井さんが感心したような声を出した。


「ただ、現時点で確認されている『変革者イノーヴァー』は1万人以上、『変革者イノーヴァー守護使ガーディアン』は12万人……それだけの数の『お守り』を、君一人で作れるのかい?」


 僕は笑顔で……


「狭間さんの許可が下りれば、今すぐにでもお届けできます!」


 ……と、自信たっぷりに言った。


「ほ~! それは凄いな! 狭間さん……どうだね?」


「もし可能なら……ご自由に……」


 狭間さんは、だ半信半疑のようだ。


「よし、許可が下りたぞ! 輪音君、見せてくれ!」


「はい!」


 ……僕は空中に……


『(目+羽)×13万』 と大きく書いた。


 それと同時に、一瞬暗闇が訪れた!  


 さすがに13万匹の『眼球』が一度に出現すると、辺りが真っ暗になるんだね!


 でも、それは直ぐに解消し、明るい陽の下、僕たちの周りには、さっき広井さんにあげた分と、白樺先輩の分、そして僕の分……と、3つの眼球だけがヒラヒラと飛び回っていた。


 ……それを見ながら広井さんが語り始めた。


「……俺は今日、本気で君をこの世から消し去るつもりで来ていた……」


 ……でしょうね。 さっきの眼は本気だったし、勝さん……今は負さん……だって、僕の急所をナイフで穿いていた。


「しかし、まさか……こんな形で歴史が動く瞬間がみられるとは思わなかった。 ありがとう」


 と言って、広井さんは右手を差し出してくれたので、僕は広井さんと堅い握手を交わした。



 ……広井さんと別れた後……


『赤松』さん……白樺先輩の家の執事さんから、恐ろしい話を聴いた。


 ……もし広井さんが本気で僕を殺そうとしたら、その時は狭間さんと白樺先輩、そして赤松さんの3人がかりで刺し違えてでも広井さんを抹殺して、僕の身の安全を守るつもりだったらしい。


 何気ないつもりで……半分、冗談のつもりで書いた『果たし状』だが、実はあの行為は万死に値するものだったらしい。


 ……それを聴いた途端、今度は僕が腰を抜かしてしまった。 ←カッコわる!

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