第7章 白樺 嶺亜《れいあ》

第1話『マインクラフト』ってゲームをやってたら、いきなり緑色の変な奴が近付いて来て、爆発して殺された(泣)

『白樺 嶺亜れいあ』先輩は、いつもの明るい表情とは違い、とても寂しげだった。 ……そして、狭間さんに一礼したあと、少し強目の口調で……


「『やすり』さん……輪音りんねにバラしちゃったんすか? ……私……もう少しだけ、楽しい『学生生活』を送りたかったんすけど……今度、試合の予定もあったのに」……と言った。


 狭間さんも一礼し「すみません。 ……実は『暗躍者クリープス』の『干渉』が活発化して『直接』が示唆されたので、こちらも計画を早めました。 ……それに……」と言って、僕に手を伸ばしているナメくんを抱くようにしながら……「輪音君は、私が以前報告したように、自分の命よりも他人の命を大切にしてしまう、最も強力で、それでいて最もはかない『変革者イノーヴァー』であることが証明されました。 ……私達が先手を打って『直接』しておかないと、私達の悲願である『完璧な世界』は、まぼろしのまま、全てが終焉を迎えるでしょう……」……と言った。


 ……白樺先輩は僕の方を向き、両手を僕の頭に乗せ、いとしむように僕の髪の毛をくしゃくしゃにしながら……「輪音りんね……もうこれからは『先輩と後輩』には戻れないから言うけど……私……輪音の事、可愛くて、大好きだったんだぞ!」……と言って、ポロポロと涙を溢した。


 ……え? このタイミングで……僕……生まれて初めて『告白』されちゃった……!?


 少し離れた場所からこちらを見ていた狭間さんが白樺先輩に深く頭を下げた。 


 ……狭間さんも目を真っ赤にして、袖で涙をそっと拭いていた……。



『キューン! キューン!』……と突然サイレンのような大きな音がした。


 それは、ナメくんの帽子からだった。 ナメくん帽子のボンボリの部分がスピーカーのような形になって音が鳴り響いていたのだ。


 白樺先輩は、僕の頭から手を離し、教室のあちらこちらから、手当り次第に物を集め始めた。


 机や椅子が、白樺先輩の華麗な動きに合わせて、形を変えながら組み上がり、気付くと映画で観たことがある『銃座』のような物が構築された! ……椅子の背もたれの部分が銃の持ち手となり、引き伸ばされた机の脚の部分が円形に組み合わされ、机の両脇に取り付けられ、双発の『ガトリング砲』になっていた! 


 ……ふと狭間さんに目を向けると、光る『バリケード』に囲まれていた。 そこから顔を半分だけ出して、眼鏡の縁に指を当てて見回し、何かを必死で探しているようだった。


 白樺先輩が……「輪音りんね! やすりさんは、特級の『策定者フォーミュレーター』だから死ぬ事は無いけど、私やきみは必死で身を護らないと簡単にあの世逝きだから気を付けて!」……と言った。 そして、もう一度僕の髪の毛をくしゃくしゃ触りながら……「私は死ぬまで君を護るけど、私が死んだら、急いで別の『変革者イノーヴァー守護使ガーディアン』を見付けて、その人に守護ガードして貰うのよ! 絶対に、絶対に死んじゃダメ! 良いわね!?  約束!」……と言って、小指を差し出した。


 ……僕がモジモジしていると、白樺先輩は僕の手を無理やり掴み、僕の小指を引っ張り出して『指切りげんまん』をしてくれた。 ……そして、僕を抱くようにして『銃座』に一緒に入った。


 ……白樺先輩が「……急拵きゅうごしらえの、この装備で……何処まで耐えられるか……」……と、小さな声で独り言を言った。


「『暗躍者クリープス』視認! 黒板!」……狭間さんが叫ぶように言った。 


 ……ん? 何か居る? ……何も視えないけど……。


「『暗躍者クリープス』! 『蜘蛛型」! 白樺さん、お願いします」


おう! いつでも!」


「リフテ、リフテ、ズゥオーマ、ロフテ、エンマ、エンマ…………」


 ……! 狭間さんが変な呪文? を唱え始めた!?


 な? 何が始まったの!?

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