第5話 現実世界では辛い事が多いけど、せめて小説の世界ではご都合主義を貫きたいよね〜

 ありゃりゃのりゃ!? ナメくんもヘルメットも全て消えちゃった(泣)


 ……ん?


 何か……声がする……。


 そちらの方向を見ると……


 ナ! ナメくん!


 ……ナメくんがちっちゃくなって、うわ言のように呻き声を上げている!


 僕は大分だいぶナメくんの言葉が判るようになっていた。 この声は……『お腹空いたよぅ……』だ! 僕は急いで家に駆け込んだ。


「お! お母さ〜ん! キュウリかキャベツある!?」


 母が……「一生いっせい! あなた遅刻しちゃうじゃ無いの!」……と珍しく怖い顔で言った。


「ごめん! でも見て! ナメくんが!」……と言って手の中のナメくんを見せた。


 ……母は何かを言おうとしたが、諦めたように苦笑して、冷蔵庫の中からキャベツを千切ってくれた。 ……僕は一人っ子なので、僕が何かを可愛がっている姿を見るのは、親としては嬉しいのだろう……。


 ナメくんは、超〜嬉しそうにシャクシャクと音を立ててキャベツに喰らい付いた。 実に良い食べっぷりだ。 ……良かった。 僕の無遅刻無欠席人生に汚点を残したが、もうそんな事はどうでも良かった。


 ……その時……またまた、ちょっとした『奇跡』が起きた。

 

 キャベツを食べ終わって満足気な笑顔を見せたナメくんの『ぼんぼり』が変形し、何かを空間に照射した。


 そこには、この世のものとは思えないくらい、途轍も無く美しい女性が立っていた……。


 ひと目で判る! このかたこそ、双子座流星帝国『パルフェ・クトゥール皇女』だ!


 パルフェ皇女は光輝く姿に負けない程の、更に輝く笑顔で


 「取説」


 と一言だけ言って消えた。 ……後から判った事だが、惑星間通信では単語ひとつ分しか送れないらしいのだ。


 僕は部屋に戻り、例の『取扱説明書』を見直した。


 禁忌は『双子座流星群に願い事を唱えた日時以前に逆行してはいけません』のみ……


 ……! ! そうか! 時間を戻せるのか!


「ナメくん!」


「にゅ?」


「『高速移動』まで時間を戻して!」


「にゅうっ!」


 ナメくんが返事をした瞬間、僕はヘルメットをかぶり、ナメくんバイクに跨っていた!


 さっきの時間に戻ったんだ! 凄い! 感動〜〜!


 ……この時は慌てていて、すっかり気付かなかったが、時間を更に戻せば、いつもと同じ時間に登校出来たんだ。 ……反省。


 ただ、今回は『怪我の功名』では無いが、僕は凄い体験をした。


 ナメくんバイクは、空を飛べるんだ!


 しかも、常に温風を送ってくれているのか、いくらスピードを上げても全く寒く無い!


 ナビも付いていて、家から学校迄の直線コースを示してくれている。 ハンドルを左右に動かし、ナビ上のガイドラインをなぞって進むだけで、あっという間に学校に着いちゃった!

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