第4話 缶カラや 寝ボケた僕の 夢のあと by 輪音 一生(りんね いっせい)

 不思議なことに、てのひらの中の『光る砂』は消えなかった。 捨てちゃうのも忍びなかったので、そこら辺に落ちてた缶を拾って、その中に入れ、急いで帰宅した。


 部屋に戻り、制服に着替えて朝食を食べる。


一生いっせい(←僕の名前)……ほとんど寝てないんじゃないの? 大丈夫?」と、母が心配そうに聴いてきた。


「凄い厚着して行って、仰向けで視てたから、寝ちゃったんだよね」……と言ったら、安心してくれたようだ。


 ……いつものように学校に行き、これと言った変化のない、平凡な授業を終えた。


 ……一つ違う事と言えば、授業中、居眠りして怒られたくらいか。 ……それでも『流星群を視てたもので……』と言ったら、ぐに許して貰えた。


 


 眠い目をこすりながら帰宅した。


 ……父はだ帰って来ないので、母と夕食を食べた。


 いつもなら、ここでお風呂に入り、歯も磨いて、あとは寝るだけの状態で部屋に戻るのだが、今日は……あの『光る砂』ってどうなっただろ?……と気になった為、先に部屋に戻った。


 ちょっとワクワクして、例の缶を覗き込むと……中は……空っぽだった。


 ……正直……寂しかった。


 一晩中、無駄な時間を過ごし、流れ星に願いが届いた……と思ったら、その夢も消え去り、ホンの少しだけ、手の中に残った『夢のカケラ』……それすらも……消えた。


 ……無駄でも良い。 『一握いちあくの砂』だけでも良い……『何か』が……手元に残っていてくれれば……それだけでも良かったのに……。


 ……そんな事を思い、からっぽの缶の蓋を閉めたら……ポロリと涙がこぼれた。

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