第一部第二章幼児期編

第6話【アインス・コンプレプリオスト】

(は?いや唐突過ぎるだろ‼︎)


 その苦情は最後まで届く事はなく体が暗闇に浮いた様な感覚に陥いる。


(そう言えばあいつ地球の小説読んでる癖に、最近有名な異世界転生系のテンプレ知らなかったなぁ)


 ここで意識は途切れていった。









うごくようごくよ〜 はじまるよぉ〜♪


せかいにおおきなひだねがきたよ〜♪









side???


「...様...ア......ス様...あ...で...よ!」


(なんか声が聞こえてきたなぁ...)


「ん...んぁ...」


「もう、アインス様⁉︎いくら何もない休日だからってお昼まで寝ていたら、マウになってしまいますよ?」


 因みにマウとは地球で言う牛に近い生き物で、名前の由来は"マゥ〜"と言う鳴き声である。


「ん...ひる?」


「そうですもうお昼ですよ!」


 そう言ってアインスを起こしにきたのはメイドをやっているアスターだ。


「もうちょっとねてちゃダメ?まだねむいよ」


「ダメです!辺境伯家なんですよ?アインス様はそれはもう偉い地位に居るんですよ?」


 アインス、正式名称はアインス・コンプレブリオスト、現在5歳児でこの辺境伯家の第一児である。


「でも父上はたまたままぞくをたおしたからって」


「たまたまで魔族が倒せるもんですか!実力が無いとあんな化け物には勝てませんよ!」


「やっぱり父上はすごかったんだ⁉︎」


「だから今日もお勉強にお稽古をしますよ」


「うへぇ」


 そう言ってアスターはアインスの手を引っ張って食卓に行く。


「ねぇアスター、きょうはあたまがいたいから、やすんでもいい?」


「そんなこと言って休みたいだけでしょ?私は騙されませんからね」


「ほんとうにいたいんだけど...」


 何回もこの手のサボり術をアスターに披露しているため、完全にオオカミ少年になっていた。こうなってしまうと何を言っても信じて貰えないので諦めるしか無かった。そんな事を考えていると長い廊下を抜けて食卓に着いた。

 そこには丁度朝の一仕事を終え、昼食をとっている仲の良い両親(父:コルチカム・母:サルビア)がいた。


「おや?アインスようやくお目覚めか?中々貴族らしい自由さだな。」


「もう旦那様!いくら貴族とは言え、ここは魔獣達の住む森に隣接した、言わば最前線なのですよ?」


「まぁまぁアスター、アインスは将来大変な未来を背負っているのよ?せめて10歳の神託の儀までは自由にさせてあげたいの。領民に迷惑をかけているわけでも無いし、許してあげて頂戴?」


 アインスがこの家を引き継ぐとなると、発展途上のこの街の領主になると言うことなので、将来大変なのは確定しているのだ。


「しかしこのままでは...」


「まぁ確かにアスターの言う通り少し責任感が欲しい所では有るな」


 大人が難しい話をしている中、アインスは昼食(朝食)をチビチビ食べていた。


(なんかたべるきがわかないなぁ)


 そんな事を考えていると、突然父上がアインスに提案をした。


「よしアインス!今日は勉強も稽古もしなくていいぞ!」


「ほんと⁉︎」


「ちょ‼︎旦那様⁉︎それh「その代わり父さんが狩りをする所の見学にこい!」...え?」


「いくいく〜!」


 元から魔獣には興味があったし、見てるだけで勉強や稽古を休めるなら、アインスにとってプラスしか無かった。


「だ、旦那様...流石にそれは危n「良いわね!戦闘を見せればアインスにとって良い刺激になると思うわ」奥様⁉︎」


 という流れでアインスの午後の予定は急遽狩りの見学になった。最後までアスターは粘っていたが、父のコルチカムがそばに居るという事と、森の奥深くには行かないと言う条件で納得した。


「じゃあアインスは稽古用の服を着て来い、父さんは一応部下に連絡して置くから」


「はーい」


 そうして父上と2人で家から歩いて森に行く。アスターが最前線と言った通り、魔物の襲撃が月に数回あるため、外壁はしっかりしたもので出来ている反面、領地の拡大を元から考えられておらず、規模が村程度の物になっている。

 そんな、街にしては小さく長閑な畑道を通り、分厚い外壁をくぐって森を目指す。

因みに村と街の境目は、神託の儀を行う為の、最低限の協会があるかどうかである。


「父上、まものがたまにいっぱいくるときがあるってアスターがまえ言ってたけど、今日はだいじょうぶなの?」


「確かに月に数回くらいのペースで魔物の襲撃が来るが、その襲撃が来る5日前にはうちの偵察係がその予兆を見つけてくれるから今日は大丈夫だよ」


「そっかー」


 実際この街、コンプレプリオストは魔物との戦闘が激しいため、かなりの実力者が集まっている。最もその多くは父、コルチカムの人望に惹かれた者であった。

 その他は自分の実力を試しに来た者や、最近だと旅行で立ち寄る者もいる。

因みに戦闘員意外はほとんど農民や、数少ない商人のみである。


「...よし着いたな今日は浅いところで父さんがトビラビを軽く狩るから見ていろよ?」


「...うんみてる〜」


(やっぱり今日なんかへんだなぁ)


 謎の軽い頭痛に疑問を抱きつつ父がトビラビを狩るのを眺めている。

 因みにトビラビとは、頭蓋骨が硬く脚力の強いウサギである。その脚力を使い凄い速さで敵に跳んで行き、硬い頭突きを喰らわせると言う単純だがもし急所に当たると恐ろしい魔獣であると同時に、この街周辺では良く出没する上に、森の魔力をたっぷり浴びて、とても美味しいので、この街の特産品の一つでもあった。


「いいかぁ?アインスこうやってギリギリまで待ってから、半身で回避し着地を狙って狩るんだ」


「お父さんすごーいつよーい」


 子供ながらの純粋な褒め言葉を言いながらパチパチと手を叩く。

 しかし一瞬コルチカムは険しい顔をして、アインスにこう言った。


「アインス、ちょっといっぱいトビラビが来たから、もう少し下がっていなさい、それと万が一があるから、お父さんが避けろと言ったらすぐに言われた方に避けろよ?」


「はーい」


(...いちおうさがっとこ...)


 アインスは父を信頼していたし、父がトビラビを取りこぼすとは思っていなかったが、言われた通り数歩後ろに下がって見学ていた。

 その予想通りコルチカムは流石の体捌きで全てのトビラビを倒していった。


"ただ一匹を除いて"


(うっ⁉︎またきゅうにあたまいたくなってきた⁉︎)


 アインスが突然今までよりも強い頭痛で頭を抱えた途端父から鋭い声がかかった。


「アインス!横に飛べ!」


「...ん...」


 意識が完全に頭痛に行っていたため、思わず先に周りの確認をしてしまった。すると既に自分の顔に向かって飛んで来ているトビラビの丸い頭が目に入ってしまった。


「ひっ!」


「アインス!」


"死"


 その印象が強く脳裏に映る。

コルチカムも急いでアインスに走って向かっているが間に合わないであろう。

 アインスにはその時間は酷くゆっくりに感じていた、しかし反対に心拍数が物凄い勢いで上がっている。

 そうまるで。そして次の瞬間


「っつ⁉︎」


 反射的に無理やり尻もちをつき、トビラビはアインスの上を通り過ぎ、額を掠めていった。そしてアインスはこう呟いた。


「あっっぶねぇ、前世と同じ死に方になるところだった...」

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