会社を辞めて解説系ユーチューバーを始めて大成功したら、なぜか女たちが誘惑してくるんだが

なるとし

元カノ

第1話 忙しい阿久津くん

阿久津健志の編集室の中



「健志、最終エンコーディング終わったから見てくれる?」

「ああ、真司。わかった。このスクリプトさえ書き終われば……」

「お兄ちゃん、原稿が誤字だらけよ」

「ああ、友梨奈ちゃんちょっと待って」

 

 編集室に改良した1DKの中には男二人と女一人が忙しなくそれぞれの作業を進めている。


 超ハイスペックなパソコンに陣取り、動画編集があらかた終わって、スポーツドリンコを飲んで人心地ついている阿久津健志の幼馴染である有馬真司。その横で猛烈な勢いで自分の兄である阿久津健志が書いた歴史解説本の原稿をチェックしている阿久津友梨奈ちゃん。


 そして、猫の手でも借りたいほど多忙だが、やりがいを感じながら一生懸命、動画のスクリプトを書いている阿久津健志。彼は別のテーブルでマックブックの画面と睨めっこをしていて、タタタっとキーボードを叩き打っている。そして横にはうずたかく積まれている歴史関連書籍。


 スクリプトを書き終えた阿久津健志は、有馬真司が出来上げた歴史解説動画の最終チェックをした。


「おお、いい出来具合だ。サムネも含めて予約投稿早速お願い」

「ラジャー!ていうか、健志、最近始めた古代メソポタミアシリーズまじやばくね?」

「ああ、まさか平均再生数100万超えとは……」

「広告収入入ったら、高級寿司屋奢れよ〜」

「ははは、まあ、一生懸命頑張ってくれてたから奢ってやるよ」

「健志ったら太っ腹〜」

「おい、その言い方はマジで気持ち悪いからよせ」


 阿久津健志と有馬真司がだべっていると、横で真剣に原稿を読んでいる妹・友梨奈ちゃんが話かけてきた


「冴えない男二人でちちくり合うのは辞めて早くこっちきて!お兄ちゃん!」

「あら、ゆりちゃん、もしかしてお兄ちゃん取られちゃいそうだからいてるの?ふふっ」

「ばか真司は黙れ!そんな気持ち悪いところだよ!彼女できない理由!」

「うっ!ゆりちゃんの言葉……心に沁みる……気持ちい……」

「Mか!全く……なんでお兄ちゃんはあんなのと昔から親しくしてきたの?」


 友梨奈ちゃんは前にかかった柔らかい黒髪を払いながら文句を言ってきた。大学2年生として絶賛JDライフを送るはずのが、阿久津健志に捕まって動画のスクリプトや原稿の修正などをしてくれている(バイト代はしっかり払う)。可愛い顔付きで、そこそこあるDカップほどの胸の持ち主であることから、きっと大学内ではひくて数多だと思われる。


「あはは、まあ、真司は性格は結構アレだけど、僕の専属動画編集者としてしっかり頑張ってくれるからな」

 

 阿久津健志はそう言ってから、腰を回して、友梨奈ちゃんのいるところに視線を向ける。そして友梨奈ちゃんが発見した誤字や脱字などを入念にチェックする。


「ふむ……あまり意識しないで書きまくってたから、確かに多いね」

「お兄ちゃんが修正する?」

「ああ、明日やるよ。今日はもう遅いし、ここらへんで切り上げよう。修正したら、もう一回チェックお願いね」

「わかった……んにゃー」


 友梨奈ちゃんは長く伸びをする。その可愛い姿を見ながら阿久津健志は何か思いついたように、目を見開いて二人に言う。


「今日は久々に夜食といきましょうか!」

「おお!健志!わかっていらっしゃる!」

「もう、太っちゃうのに……奢ってくれるなら……」


 阿久津健志は二人の反応を見て満足げに頷くと、笑顔で口を開く。




「食べたいものあれば、言って」

 

 二人の要望を聞いた阿久津健志はなんちゃらイーツアプリで注文を済ませる。がやて配達員が3人のいる編集室へとやってきた。今日の夜食はピザ。見るからに美味しそうなLサイズのピザを食べながら、有馬真司が口を開く。


「それにしても、いきなり会社辞めてユーチューバーやると聞いた時は驚いたよ」

「本当にそう。お兄ちゃんって性格もアレだし、自分の見た目も全然気にしないから、絶対向いてないと思ったよ」

「まあ、流石に顔出しでやるタイプの動画は投稿できないからね」


 阿久津健志が照れ顔で答えると、有馬真司は含みのある顔で言う。


「ゆっくり素材を使った歴史解説。その分かりやすい解説と深い知識で今やチャンネル登録者数50万を超える人気youtuberに!」


 友梨奈ちゃんも同調する。


「その上、歴史解説本も出して、あっという間にミリオンセラー!」


 そんな二人の様子を見て頬を赤めて頭を掻く阿久津健志。


「あはは、照れるよ……ていうか、僕が成功できたのは、会社を辞めても僕を励ましてくれた友梨奈ちゃんとお母さんとお父さんがいて、僕を信じて専属動画編集者になってくれた真司がいるおかげだから」

「ご謙遜なさらず〜健志はすごいよ。昔から歴史好きなのは知ってたけど、まさかここまでとは思わなかった」

「お兄ちゃんはずっと辛い人生を歩んできたから、幸せになれる資格があるよ」

「ああ、それは同感。これからだよ、真司」


 二人が言っているように、阿久津健志は辛い人生を歩んできた。学校時代は、隣にいる有馬真司と一緒にカスト下位の辛い学校生活を送ってきた。そして、受験に失敗して、行きたい学校にも行けず、滑り止めの大学に合格。そこで初めて付き合った女の子からは浮気され深い傷を負ってしまった。しまいには、職場の同僚と上司から仕事を押し付けられて、病んでしまい退職。


 不幸を絵に描いたような人生を歩んできた彼は今、すごく輝いている。


「ところで、お兄ちゃん」

「うん?」

「明日はなゆぽんさんとのオフ会じゃん。準備はできてる?」

「あ、う、うん……」

「絶対できてない。服とか髪のセッティングも全部忘れたでしょ?」

「そ、それは……」

「朝起きたら、私の部屋に来てよね!また手取り足取り教えてあげるから!」

「お、お手柔らかに頼むよ……」

「それにしてもなゆぽんちゃんか……あの、チャンネル登録者数150万を超えるメガトン級美少女ユーチューバー!うらやまけしからんすぎるぜ!健志!」

「い、一緒に食事するだけだし!別に大したことないから!」

「とにかく、相手はすっごい可愛い美少女だから、お兄ちゃんが恥をかかないためには、身だしなみに気を使った方がいいよ!」

「い、いいよ!別に!僕なんかが背伸びしたって……」

「そんなことないと思うよ、お兄ちゃん……」

「健志、お前は自分の価値を知らなすぎるよ。ここは、ゆりちゃんに任せな!ね?ゆりちゃん?」

「お、おう!冴えないお兄ちゃんをイケメンお兄ちゃんに変えてあげるから!」

「健志が終わったら、俺もイケメンにしてくれ!ゆりちゃん!」

「あんたは黙ってピザでも食べろ!」

「はい」


 そう。阿久津健志は明日、大人気youtuberであるなゆぽんちゃんという可愛い美少女とデートをする。そんな彼ははやる気持ちをなんとか抑え込んでピザを食べ始めた。









追記


 


 今まで、描写と解説中心の小説を書いていたのですが、これからは会話が中心になって、キャラたちの個性や性格を描いていきます。


 次回は可愛いなゆぽんちゃんが出ます!

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