ひとりぼっちのクリスマス
神楽むすび
第1話
寒空の下、夜空を彩るイルミネーション。幸せそうに歩く恋人やプレゼントを抱えて帰る人たちが、絶え間なく流れるメロディとともに通り過ぎてゆく。毎年見慣れた光景で、温かい気持ちになると同時に一抹の寂しさ。
今年もひとり。仕事帰りの疲れた体に、寂しさが少し堪える。
ふと通りかかったお洒落なお店から、1人の男性が大事そうに箱を抱えて出てくる。ケーキか。しばらく食べていないな。たまにはクリスマス気分くらい味わいたい。そんな考えに誘われて、なんとなく入ってみたくなった。
「いらっしゃいませ~」
店に入ると、サンタの格好をした女性店員が出迎える。クリスマスだけに店内は混んでいた。ショーケースに並べられたケーキは、少々値が張るがどれも美味しそうなもの。
「えーと、これとこれ、ください」
ホールケーキは食べれないので、ショートケーキを2つ選ぶ。1人で食べるだけだから、1個で十分。2つ買ったのは、見知らぬ店員に1人で過ごす奴と思われたくないという、ただのつまらない見栄だった。
「おふたつですね。よいクリスマスを」
てきぱきとケーキを箱に入れて、サンタの店員さんがにっこりと差し出し、勘定を済ませる。見知らぬ店員さんにすら見栄を張る自分に、ちょっぴり情けなくなりながら、店を出る。
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