もしかして:嘔吐恐怖症 (2021.6.5)
休日昼下がり、本を読んでるところだった。
腹に違和感。何かキリキリするような、モヤモヤするような。ひっくり返して洗浄したくなる、そんな吐き気がまたやってきた。
別にこれでトイレに行ったって吐けるわけじゃない。ただただ気持ち悪さが僕を無駄に追いかけてくるだけ。体さん、タチ悪いなぁ……と、口元を押さえながらぼんやり思う。
「……しーさん?」
「なに、要件は手短に」
「えぇ」
僕の彼氏、少年こと奏(そう)のことを睨みつける。こちらもジト目で見つめられる。
「なんか口押さえてたから、どしたのかなーって」
「あそう、いつもの吐けないやつ」
「……はぁ、平気?」
そう言って少年は僕の隣へと腰掛け、そっと背中を撫で始めた。
手の温もりというべきか、摩擦熱というべきか怪しいが、背中が温まる。いや、それは生理の時にやれ、と誰かがツッコミをいれたが、まぁ別にいいや。
「あ、あれやったらどう? 親指喉の方に突っ込むやつ」
「それやったらほんとに吐きそう」
「吐いたら? スッキリするんじゃない?」
えぇ……と若干引きつつも、少年は少々部屋を動き回って、あっという間に『吐き出すところセット』(セット内容:風呂桶、その中に適当に入れられたトイレットペーパー)を完成させた。
「さぁ、どうぞどうぞ」
「えぇ……お前人前で吐きたいか……?」
「『家族』の前ならいいんじゃない?」
強調されたものに少しだけ照れを感じる。
……さて、どうしようか。
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