巫女は職員

 新しく身体を貰い、ミニマと行動するようになって半日もしない内に、何度自分の境遇が面倒なだという事を思わされる現状。

 自身でもくどいと思うが、こうも短い間隔でこれを思い知らされるというのは、中々にシンドイと思いながら待つ事しばし。

 エピアを連れて新しい人物が登場する。

 そして、エピアは何か機材を載せたカートを押していた。

 二人が入ってきた事を受け立ち上がる

「初めましてイエリア・ネロです。

 この派出所の所長を勤めております」

 それに先んじてエピアの上司だろう人物は声を掛ける。

「初めましてピクノスです」

「ミニマよ!」

 挨拶をしながらイエリアとエピアは席に着く。

 それに併せてピクノスも席に着いた。ミニマは肩の上に落ち着いた。

 それぞれの立場の者達が席についてから、先に言葉を発したのはイエリアだった。

「エペアから概略は窺っております。

 まずは冒険者の登録から済ませようと思いますが、宜しいでしょうか?」

「はい、お願いします」

「エピア」

「はい、では此方のカードをお持ちください。

 そして、この水晶の下部の機器に差し込み水晶に触れてください。

 それでピクノス様のステータスがカードに転写されます」

 と言いつつ、エピアは自らが運んできた機材を指し示し説明をした。

 カードを受け取ったピクノスは説明された通りに行動する。

 カードを機材のソケットに差し込み水晶に触れる。

 すると水晶が俄に煌めき水晶下の機材からカードが吐き出される。

 そこにはピクノスの名前とその下に「ステータスランク1」と「アチーブランク1」と表記されていた。

「はい、これで冒険者登録完了しました。

 以降冒険者ギルドでの各種手続きには、この冒険者カードの提示が求められますので、冒険者ギルドを訪れる際や、冒険者として活動中の身分証明等で提示が求められる事があります。

 ですので、特に理由が無い限りは常に持ち歩く事をおすすめします」

「解りました」

「また、この冒険者カードですが、余程の事が無い限り破損する事がありません。

 折り曲げたりしても、皺が出来たりもしないのですが、これは我らが神ルードゥス様の御力によるものです。

 ですので出来る限り粗雑に取り扱うのは控えてください。

 それと、紛失に際の最発行時には発行費用として金貨一枚を徴収させて頂きます」

 ピクノスは何の変哲も無いカードを矯めつ眇めつしながら、このカードが実際どれ程の強度を保持しているのか、思考をよぎる中説明を聞いている。

「それと、カードに記されていますステータスランクは、ピクノス様のステータスを参照して評価したランクになり、アチーブランクは冒険者ギルドが発行していますクエストの成功回数を参照したランクとなります。

 この二つのランクが高ければ高い程、冒険者としての信用が高まっていくとお考えください。

 詳しい事は此方の約款をお渡ししますので、時間のあるときにご確認をお願いします」

 そう言われながらエピアから渡される冊子を貰うピクノス。

「私からは以上となります、質問はありますでしょうか?」

「今すぐに聞いておきたい事は特に無いですね。」

「そうですか?

 もし、後で気になる事がありましたら、気兼ねなく聞いて下さい」

 その様を見ていたイエリアが二人の遣り取りが一段落したのを確認して話しを切り出した。

「では、私の方から提案です」

「なんでしょう?」

「ここに居ますエピアなのですが、今後ピクノス様に同行させて頂けないでしょうか?」

「一緒に…ですか?」

「はい、私達は冒険者ギルドという役割を任せられた、ルードゥス様の巫女になります。

 ですので、ルードゥス様に見出されたピクノス様を支える為、エピアをご一緒させて頂きたい。

 そうすれば、少なくとも冒険者ギルドに関する各種手続きに関して、エピアの方でで対処出来ますし、エピア自身も巫女としての鍛錬となります。

 ですので、もし宜しければエピアの動向をお願い出来ますでしょうか?」

「それは…」

「もちろん、いきなり見知らぬ人と行動を共にしろという者難しい話しだと思いますので、もし、ピクノス様のお時間に都合が宜しければ、少々この地域でエピアと一緒に冒険者として活動頂き、行動を共にするパートナーとして問題ないかを見極めて頂ければ幸いです」

 ピクノスはイエリアの事を見る。

 その雰囲気は何とかして自らが信仰する神が関心を寄せる存在に、自分達の息が掛かった者を近くに侍らせておきたいのだろうなと想像をし、そうなると、これを断った際、今後の冒険者ギルドの関係性について考える。

 表だっては特に何か変わるものでは無いだろう…が、問題は見えない部分でどの様な判断を下され、それによってどんな行動を取られるのかという事。

 ピクノスは、予想仕切れないこの問題に対して逡巡を憶えながらも答えを出す。

「そうですね、お互いの性格の相性もありますし、提案して貰えたように、少しこの辺りで一緒に活動してみて判断をさせて貰えますか?」

「はい、私共の我儘を聞き入れて下さり有り難う御座います」

 イエリアは礼としての言葉をピクノスに述べた後。

「では、後の事に関してはエピアに聞いて下さい。

 エピア、もし君の裁量権や判断で対応出来ない出来事が起きたら、遠慮無く連絡をするように。

 私の権限で冒険者ギルド各所に連絡が通るように段取りを組むので、この相性を計っている期間が終わる頃には、何処の支店でも君の冒険者カードを提示すれば私のところに連絡が来るように手続きを終わらせておく」

「はい、解りました。

 その時になりましたらよろしく御願いします」

「では、私はこの辺りで失礼させて頂きます」

「はい、色々と手を尽くして下さり、ありがとう御座います」

「お気になさらず、先程もいいましたが、これは私達の都合ですし、そもそも、これが仕事ですから」

 そう言って二言三言簡単に挨拶を交わすとイエリアは退出していった。

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