桜佐咲⑦
■
<体育の時間>
今日は男女合同で短距離走の授業だ。順番に50メートルを走って、タイムを測定している。
風邪から復帰しての体育で短距離走はちょっと憂鬱だ。タイムを計測されるのは好きじゃない。いい数字なら嬉しいが、基本的にあまり良くない数字だから……。
「もうすぐ球技大会だなー。千尋は競技何やるか決めた?」
走るまでの順番待ち中に友人の
球技大会……。うちの学校は体育祭と球技大会と2つあり、球技大会は球技だけで各クラスが競い合って勝敗を決める。毎年すごく盛り上がっていて、球技の運動部の生徒が活躍をしている。
「僕は去年と一緒で卓球かな」
「だよなー。去年みたいに初戦で負けて、あとの残り時間でゲームでもしようぜ」
「うん」
「「おおーーーーっ!!」」
クラスの男子の歓声が上がる。歓声の方へ目を向けると桜佐さんが走っていた。
2人1組で走るのだが、相手の女の子にかなりの差をつけてゴールする。相手の女の子って確か陸上部の子のはずなのに……。
「やっぱり早いなー桜佐」
「おーい恵介。お前が大大大好きな桜佐さんが頑張ってぞー」
「うっせえなバカ」
「ひゅーひゅー」
桜佐さんのことが好きな不二くんが周りの友人たちにからかわれている。
桜佐さんは小さい頃から運動もできて、いつもかけっことかも全部1位だった。モデルをやっているから部活には入っていないが、もし入っていたらどの部活でもエース級の活躍だったと思う。
走り終わった桜佐さんは息も切らすことなく、待機場所に歩いている。すごいなぁ。
「桜佐さん、何でもできるんだなー」
「うん。本当すごいよね」
「勉強もできて足も速くて性格も良いモデルとか……無敵かよ」
「た、確かに無敵だね」
「次、男子の番だぞ。並べー」
女子全員の測定が終わって男子が走る準備を始める。
一番手は不二くんが走るので、たくさんの女子が注目している。
先生の合図で不二くんたちが走り出した。
「うわっ不二のやつ、相変わらずめちゃくちゃ早いな」
「そうだね」
不二くんは運動神経抜群のに加えて、学年で一番足が速い。いつも体育祭の時もリレーでは一番だ。
そのまま圧倒的な差を付けて走り終わった不二くんのところに不二くんの友達や女子たちが集まって盛り上がっている。
足が速いってどんな感じなんだろう。一度でいいから不二くんくらい早く走ってみたいなあ。
「はい。次の人ー」
「頑張って来いよ、千尋」
「う、うん。行ってくるね」
その後も次々と呼ばれた男子が走っていって、あっという間に僕の番が回ってきた。
はぁ……憂鬱だ。体育は昔から苦手でこういう走る系の授業は心も体も重くなる。
「よーい……どんっ!」
合図で走り出すがスタートからもう差ができている。
なんとか差を縮めようと一生懸命走るが一緒に走った子との距離がどんどん開いていく。その子がゴールして2、3秒後にようやくゴールすることができた。
「はあ……はあ……」
つ、疲れた……。
「春日井。今回のタイムはこれな」
先生からタイムを見せてもらった後、酸素をいっぱい吸い込みながら歩いていると一平が僕の方まで来てくれた。
「お疲れー千尋」
「う、うん…………ありがとう」
去年よりタイムが少しだけ速くなっていた。ちょっと嬉しい。一回走っただけなのに汗をいっぱいかいちゃった。
まだ出番が先の一平と話しながら待機場所に向かった。
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