天使のいたずらで人生が無茶苦茶になりました~いじめられっ子から魅力度MAXになって、色々な女の子からいっぱい愛される話~」
ハイブリッジ
第1話
ここは
私は今、2人の天使と人間の人生設計の見直しをしている。
「あーもう! 忙し過ぎる!」
天使Aが机に突っ伏しながら叫び始めた。
「確かにねー。…………本当にやってくれたよね、あの天使は」
作業の手を止めることなく天使Bが呟いた。
天使Z。この一人の天使が起こした大事件。
Zは自分が楽しみたいという理由で、人間の人生計画を改変したのだ。
どれだけの数を改変したのか、どの人間の人生を改変したのかなどはZの行方がわからず、聞くことができないため不明。
なので、私たちが人間を一人ひとり確認・できるところは修正するという地獄のような業務をするはめになってしまった。
この後始末に加えて通常の業務……パンクしそうだ。
「少し、人間界を散歩してきます」
「おいおいC、サボりかー?」
「……気分転換しないと気が滅入りそうなので」
私はよく人間界に気分転換の為、散歩に出かける。私たちより忙しそうな人間の顔を見て気持ちを楽にしたり、色々な景色や建造物、乗り物が見て楽しんだりする。
「まあそうだよな。A、私たちもちょっと休憩するか?」
「さんせー」
「それでは、行ってきます」
「すぐ帰って来いよー」
◆
「ねえ。何でまだ生きてんの?」
放課後の誰もいない教室で僕、
「…………っ」
「だんまりかよ、つまんね。ほら、そこに入ってよ」
一人の女子が指差したのは掃除用具を入れるロッカーだった。
「えっ? い、嫌だよ」
「はあ! 何反抗してんの? あんたは黙って入ればいいんだよ」
2人のクラスメイトに腕を掴まれ、無理やりロッカーの中に入れられ、扉を閉められる。ロッカーの中は暗く、埃っぽい。
「やめ、出してよっ!」
「あははははっ!? ばーか」
外から抑え込まれていて開けることができない。
「お願いだから、出してよっ!」
「死んだら出してあげるよー」
外から笑い声が聞こえる。…………なんでこんなひどいことをするんだろう。
「ぅ…………っ……」
「うわっ泣いてるよ、キモっ」
「あっ咲。遅かったね」
「何してんの?」
読者モデルをしていて学校中の男子からモテモテ。加えてクラスのカーストトップということあり、彼女の言うことはクラスでは絶対だ。
僕は毎日、何かしらで桜佐さんからいじめを受けている。
「ロッカーの中に春日井を閉じ込めたの」
「あいつ、この中に閉じ込められて泣いてるんだよ。マジウケるよね」
桜佐さん以外の3人の笑い声が聞こえる。
「はあ……なんであんたみたいなやつと幼馴染なんだろう」
コツコツという足音がロッカーに近づいてくる。
「正直気持ち悪いんだよね。あんた見てるとさっ!」
「ひっ!?」
ガンッと大きな音がロッカーの中に響き渡る。桜佐さんがロッカーを蹴ったか何かしたようだ。
「怖っ! 私たちより全然えぐいね、咲」
その様子を見て再び笑い声が聞こえてきた。何が笑えるのかわからない。
「ねえねえ。先生からさ、あんたと家が近いからってプリント届けてくれって言われた時の私がどんな気持ちかわかる?」
ガンッガンッという音が何回もロッカーの中に響き渡る。ロッカーが揺れて閉まってある掃除用具が体に当たる。
「わかるかって聞いてんだよっ!!」
「わ、わからない……です」
「私は
バンッ!! 今まで一番大きな衝撃がロッカー内に響き渡る。
「………………マジでむかつく」
そう呟くと桜佐さんはロッカーの扉が勢い良く開き、手を掴まれると床にたたきつけられた。
「痛っ!」
受け身も取れず背中から落ちてしまった。顔を上げると桜佐さんが目の前に立っていた。
首まで伸びている茶色がかった髪を手でなびかせながら、パッチリと大きい猫のような目が僕を睨んでいる。
「ねえ。一発だけ蹴ってもいい?」
「え?」
答えを言う前に桜佐さんの右足が僕のお腹を思い切り蹴り上げる。
「ぅぐ…………………けほっこほっ!!」
い、息ができない。苦しい……。痛い、痛い痛い痛い痛い。
床で
「あーあ。蹴ってもスッキリしないし、余計イライラするだけだったわ。ストレス発散にもなんないとか、本当に使えない」
苦しんでいる僕のカバンや筆記用具、教科書を投げつけてきた。
「痛っ、や、やめて」
「10秒以内に私の目の前から消えてくれない」
冷たくゴミを見るような目で僕を見ている桜佐さん。
「ほらほら早くしないとまた蹴られるよー」
「じゅーう、きゅーう、はーち、なーな…………」
周りの女子が楽しそうにカウントダウンを始める。
「…………っ!」
は、早くここからいなくならないと、また蹴られる。またあの痛いのをされる!
床に散らばった教科書たちを急いでかき集め、カバンに押し込み走って教室を出ていく。
「あーあ逃げちゃったー」
「…………本当に気持ち悪い」
◆
高校1年の夏休み前辺りから急に女子からいじめられるようになった。今が高校2年の春なので、約1年ほどいじめられている。
理由はまったくわからない。本当に急にだったから…………。
物を隠されたり、壊されたりされるのは両手では数得られないほどされてきた。暴力もたくさん受けてきた。
「……………………どうして、こんな」
うつ向きながら歩いていたのでドンッと人とぶつかってしまった。
「す、すいませ……っ!?」
顔を上げると長く美しい黒髪が映える女子生徒が立っていた。
「ああ。お前か……」
「ひっ……廻間、先輩……」
会うたびに何かしらで因縁をつけて、僕に暴力を振るってくる。
「……………………はぁ」
虫を見るような目で廻間先輩は僕を見下している。
「す、すいませんでした…………」
急いで下駄箱の方へと走っていく。
は、早く逃げないと…………。
「待て」
低く怒気の含んだ声が背後から聞こえ、走っていた足が止まってしまう。
「まさかお前からぶつかっておいて、そんな軽い謝罪だけで終わるわけじゃないだろうな」
その場から逃げようとしていた僕にゆっくりと近づいてくると、そのまま僕の足を蹴る。
「痛っ……」
痛みでしゃがみこむと先輩に頭を上から押さえつけられる。
「や、やめてください!」
「うるさいな、クズのくせに……」
頭を押さえつけている手の力が一層に強くなる。
「謝り方が違うだろ。ほら、きちんと土下座して謝れ。私が教えてやろうか? 土下座のやり方」
耐えきれず、地面に倒れ込んでしまう。倒れても廻間先輩の力は緩まる様子もなく、頬が床に強く押し付けられる。口の中に血の味が広がる。
「お前は本当に男なのか。女の私に軽く力で負け、身長も私より低く、うじうじしていて…………見ていて本当に不快だ」
「…………ぅ…………っ!」
「泣いているのか? 見た目も心も小学生だな。同じ高校に通っていることが恥ずかしいよ。さっさと学校を辞めてくれないか」
ようやく廻間先輩の手が頭から離れていった。
「早く誠心誠意、謝れ」
「………………ぼ、僕が、よそ見をしていたせいで、廻間先輩にぶつかってしまって……本当に申し訳ありませんでした」
痛みを我慢しながら廻間先輩に土下座をする。
「……………………このゴミが」
満足したのか廻間先輩は校舎の方に向かって去っていった。
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