186.集めるべき5つの珍品達
ドラゴンの羽の被膜……ルキフェルはくれないよな。剥ぐときかなり痛いと思うし。どこかに亡くなったドラゴンの羽が残ってないだろうか。あっても遺品だったら取り上げるわけに行かない。唸りながら難題に首を傾げるルシファー。
ところが隣で同じ紙を覗き込んだアスタロトは、あっさりとこの問題を解いた。
「何を悩んでいるんですか、魔物のワイバーンを狩ればいいでしょう。あれも竜の一種です」
言葉が通じないため魔物分類されているが、確かにドラゴンの形をしている。種族的な特徴が一致すれば問題ないだろう。さらさらと命令書を書いて、ベリアルに持たせた。その間に飛んできた攻撃は手前のアスタロトがすべて受け止める。
見事な連携プレイでクリアした二人は、にやりと笑い合った。魔王軍にワイバーン捕獲を命じたのだ。その際に羽だけは傷つけないよう、注意書きも添えた。次に必要なのは鳳凰の尾羽だ。
「これは簡単だな、アラエルに貰おう」
「彼はいま生まれ変わりで火口にいます、ピヨにもらっては?」
「ヤンが許すかな」
不安になりながらも、城門にいるピヨへお伺いを立てることになった。鳳凰指定だが、青い鸞でも問題ないだろう。所詮は同種だ。
「次は?」
「巨大タコの吸盤ですね」
「これは持ってる!」
収納から太いタコの足をちらりと見せる。タコ焼きで使わなかった根元に近い部位が、そのまま保管されていた。
「ルシファー様、魔力の無駄遣いなので不要な物は外に出すようお話したはずですが?」
「生ものは腐るじゃないか。収納なら冷却用の施設も要らないし……食べたいのか」
「要りません」
食べないが吸盤は使用するため、タコの足を一抱え程カットして床に置いた。絨毯が汚れますと嫌そうな顔をする侍従のコボルト達に促され、執務机の上に載せられる。それもどうかと思うが、ひとまず書類はないので良しとされた。
魔王の執務室、魔王の執務机にタコの足……威厳もへったくれもない。
「あぶぅ!!」
叫んだイヴが全力這い這いを披露するのを、録画用の魔法陣でしっかり記録しながら次の必要部材を目で追う。
「残りは精霊の鱗粉、人狼の爪……」
「精霊の鱗粉はベルゼビュートに提出させましょう。彼女も一応精霊です」
アスタロトはひとつ悩みが消えたと笑うが、あれでいて精霊の女王だぞ? 数字以外に執務能力がないベルゼビュートだが、精霊女王という二つ名があった。あれは彼女自身が名乗ったのではなく、精霊達がそう位置付け敬っている。
「ベルゼにはオレが頼む」
間違いなくアスタロトに頼んだら事件を起こす。セクハラだのパワハラだと騒ぎたてるに違いない。オレが柔らかく煽てて頼んでみよう。ルシファーの決断に「お任せします」とあっさりアスタロトが引き下がった。この時点で、押し付けられたと気づかないところが、お人好しの魔王らしい。
「人狼?」
あれは絶滅した、いや……? そういや十数年前に保護したっけ。家が見つかるまで息子と一緒に魔王城に住むよう話した。思い出した!
「ゲーテだ!」
「彼には私が交渉しましょう。爪でしたね。1本でいいのでしょうか」
「無理やり引き抜くなよ。頼んで切らせてもらえ」
「もちろんです。これでも外交担当ですよ」
だから心配なのだ! 魔族の外交担当は、基本的に人族相手に脅しを掛けたり、脅かしたり、攻撃するのが役割だった。宣戦布告くらいしか仕事がない外交担当……魔族内なら魔王や大公が出向いた時点で、大抵の外交問題は解決するのだ。危険な気もするが、念を押したし大丈夫だよな。
ルシファーは心配に痛む胃を撫でながら、のそのそと動き出した。
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