黒猫現る 少しの夢を見させる 娘と父親 編
すんのはじめ
第1話
前書き
私は、小さな会社の総務を担当している当たり前のサラリーマンだ。
ある日、突然、警察から妻の死を知らされた。2日前、田舎の墓参りに行くと出掛けたのだが、そのまま連絡が途絶え、心配していたところだった。
あの日から、四十九日をすましたところだった。あの日、妻は何者かに連れ去られたのだろう。離れた山林の中で、数日後に発見された。衣服が引き裂かれ、無残な姿だったらしい。まだ、犯人は捕まっていない。犯人が憎かった。妻の身体をむさぼり、そして無残にも命を奪った。私から・・。
一人娘の あかり は、その時、高校3年生で、大学受験の最中だつた。ショックからか、希望の大学に失敗し、短大に進んだ。しばらくは、沈んでいたが、父親思いで家事のことも進んでやってくれている。
- - - - - - - ☆ ☆ ☆ - - - - - - -
1周忌を終えて、私は、台所でビールを飲んでいた。風呂あがりで、あかりがタオルを頭に巻き付けて、コップを持ってきて
「私にも ちょうだいな」
タンクトップにタオル地の短パンだ。バスタオルを肩に掛けているが、ブラジャーも付けてなく、胸の形がそのままにわかる。やはり、目のやり場に困るが、それとなく、見てしまう。長かった髪の毛を切ったので、最近、ますます妻に面影も似てきたように思う。あのうなじと横顔なんか、結婚した当時の彼女とそっくりだ。
郷子の実家は、北陸の小さな漁村だ。高校を卒業して、就職してきて、私と知り合った。10年ほど前に父親が亡くなって、その後は、彼女の兄が後を継いでいたが、3年前に突然、全てを放り出して、外国に行ってしまった。母親は、ずーと前に亡くなっていたので、その実家も、近くの山にあるお墓もほったらかしだった。彼女も父親が亡くなって、3回忌からずーと帰ってなかったので、13回忌ということで、独りでお墓参りに出掛けて行った。その場所から、少し離れた山中で遺体が発見された。あかりには、彼女が犯されていたことを知らせていなかったが、新聞とかネットで、おそらく知っていると思われる。
それでも、あかりは、大学生になってから明るく振舞ってくれて、私を気遣ってくれてか、クラブにも入らず、私の休みの土日も一緒に過ごしてくれて、外食も必ず一緒だった。
そんなあかりにも、2年の夏頃に、付き合う男性が現れた。5才年上の社会人だったが、研修とかで知り合ったらしい。お互い、魅かれあって結婚の約束をしたらしかった。年が明けて、私に紹介されたが、なかなかの好青年のようだった。ところが、3月に入った頃、彼の海外出向が決まって、長期になるので、彼は結婚してあかりを連れて行きたいと申し込んできた。あかりも悩んでいたが、私が、好きな人とは離れない方が良い、一緒に行けと諭した。あかりの短大の卒業式が終わって、妻の3回忌を終えて、翌日が結婚式で、その日に彼女等は旅立つことになっている。
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