第3話



 王女は辺りを見渡してから話を始めた。


「皆様には私達の国レイセヘル王国を魔王の危機から救っていただきたく召喚の儀を行い勇者達にお越しいただきました」


 私はその話を聞いて、この人が本当にこの国の王女様だということなら隣にいる太っているおじさんは王様で、反対の隣にいる若そうな人は王子様なのかな? とそんなことを思った。するとクラスメイトの1人の男子が手を挙げながら質問をした。


「あの、つまり、俺達に魔王の討伐をお願いしたいということですか?」


 そう質問をした彼の名前は中山光晴。彼はクラスの人気者いや、学年の人気者かな? かっこよくて、運動も勉強もできる秀才だ。背は高くて、髪はやや金髪に染めていて如何にもリア充な感じのする男だ。ただ、その彼にも欠点があり人を見る目や周囲の機微に疎い。まぁ、男子と女子からも人気があるからクラス委員長とかもしている。でも、雑用とかは女子のクラス委員の子がやっているみたいだけど。


「はい、その通りです」


「い、嫌だ。僕は戦いになんか行きたくない!」


「わ、私も」


「そもそも俺達は戦い以前に武器すら持ったことないから無理だ」


 と一部からはそんな声がした。辺りにいるクラスメイト達はそれに同意するかのように頷いている人も何人かいる。まぁ、そうした反応を示していない人の中にも同じことを思っている人もいると思うけど。因みに、私もその意見に賛成だ。ゲームとかならまだしもいきなりそんなこと言われても無理だと思う。運動が得意でもないからかなりきつそうだし……。


「こちらの事情であなた達を召喚したことは、謝まることしかできません。申し訳ありません」


 すると王女が眼尻に涙をためながらそう謝った。文句を言った生徒の一部は、彼女の表情を見て気まずそうにしていた。他の生徒からも、お前が泣かせた。と言った冷たい視線を向けられていたが素知らぬ顔をしている人と俯いている人に分かれていた。ただ、私にはその女の人がわざと泣いているのでは? と思った。その、何というか嘘くさい? そんなことを直感的に思っただけかもしれないけど……。


「みんな、彼女も悪いと思っているみたいだし、これ以上責めるのはやめよう! それに彼女達も困っているみたいだし、俺達にできることはしてあげよう! もちろん無理にとは言わない。彼女達を助けたいと思った人は俺に付いて来てくれないか」


 中山がそう言うと辺りは静まり返ったが一人の生徒がその沈黙を打ち破った。


「俺がお前に付き合ってやる」


 そう言って立ち上がったのは大男の勝山熱司。中山光晴の仲良しメンバーの一人だ。とにかく大きくて身長は190弱あると思われる。運動が得意で中山光晴にも負けないくらい身体能力が高い。ただ勉強はそこまで得意ではないが……。


「ありがとう熱司」


「気にするな。いつも競い合っている仲だろ?」


「確かにそうだな。よろしく頼む」


「俺も付き合うぜ」


 そうして次に名乗りを上げたのは松山弘。こちらも先ほどと同じ中山光晴の仲良しメンバーの一人。運動はそれなりにできるけど、先ほどの二人には遠く及ばない。代わりに勉強はよくできてテストの点数を中山光晴と競っている。


「それじゃあ、俺も付き合うよ」


 と少し面倒臭そう、だけどしょうがないなぁ……。みたいな感じで名乗りを上げたのは中山光晴の仲良しメンバー最後の男子、山下京介。これと言って突出したものはないが全体的に何でもこなせるがパッとしない人物。ただ、これは個人的にかもしれないけど、この山下君は中山達のメンバーの中でちょっと異質な気がする。何というかどうして中山達と一緒に行動しているのだろう? と思うような人物だ。


 いつも中山光晴のサポートをさりげなくしている人でもある。ただ、中山本人はそのことに気付いていないみたいだが……。


「おぉ、2人ともありがとう」


「「それなら私も光晴のために頑張る!」」


 そう言った女子達は中山といつもつるんでいる女子達だ。一人は藤吉京美。金髪に染めている長い髪を靡かせながら中山達に近づいている。背はそこそこ高くて学年の男子は彼女に好意を持っている人も多い。ただ、個人的には彼女のことをあまり好ましく思っていない。何というか先ほどの王女様とやや似た感じがする。


 そしてもう一人は松本玲華も同様である。彼女は茶髪のセミロングヘヤーで先ほどの子よりも少し背が低いこの2人は仲が良く中山達といない場合は2人で行動していることが多い。彼女も男子にそれなりに好意に持たれていてこの2人は学園の男子の中でもかなりもてる。ただ不思議なことにこの2人には女友達がほとんどいないが……。


「2人とも来てくれて嬉しいよ」


 そう中山が喜んでいるとそれからも続々と賛同する人が集まっていき、男子クラスのほとんどの人が女子は一部の人達が参加を表明した。


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