6月の悲劇

鈴木茉由

第1章

ひめゆり学徒隊。

もう二度と私はあのような思いはしたくない。



長い戦渦が続き、毎日恐怖に怯えて過ごす生活を強いられていた。毎日誰かが命を落とす。世界は人の命をどのように考えているのだろうか。人の命を好き勝手に弄んでいるようにしか思えないのが私の正直な感想だ。そんなことを考える毎日がもう何年も続いている。いつでも戦争は頭の片隅にへばりついている。精神的に参ってしまいそうだ。


光子みつこ?そんなところで何を考えているのですか?」


私は和子かずこの声で我にかえった。


「もう戦争が始まってから頭の中に必ず戦争のことがあるわ。」


「戦争は仕方ないものだわ。お国が決めたことですもの、私たちにどうすることもできないのよ。私たちにできることはお国のために必死になることだけよ!」


和子はいつも「お国のため」と言っている。私たちはだんだんと戦争に洗脳されているのである。


「そんなことより看護の授業が始まってしまいますよ!」


最近になって看護の授業の比率が多くなった。戦地で出た負傷者の手当などができるようになるためだと聞く。私達は動員命令が出たら戦地にいくことになるのだ。私はそんなことを考えながら和子とともに授業へと向かった。


「おい!渡久山とくやま何をしている!やる気がないなら出ていけ!」


「申し訳ございません!決してやる気がない訳ではないのです!私もお国のために貢献したいのです!」


こんな感じで軍隊の人に教わりながら全くわからない看護のことを一生懸命頑張った。





そして、気温もちょうどよくなってきた3月の下旬。

私達、沖縄師範学校女子部に動員命令が降った。


ひめゆり学徒隊は沖縄陸軍病院へと向かったのである。

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