第33話 そして剣は英雄を喚んだ
それはまるで無駄がなかった。
躊躇いも迷いもない。ただ、ソレだけを成す為に創られた存在であり、絶対的な殺戮者を前に帝王でさえもただの『ドラゴン』に過ぎなかった。
「バルバトスから聞いたぞ。一斉に眠りに着くんだろ?」
「そうだ」
老害は相変わらずこっちを見ない。背を向け、失った片腕は思い知らされたと言わんばかりだった。
「お前はどうする?」
「我はパス。身を寄せ合うなら勝手にやっててくれよ」
「残り、戦うか」
「我は見聞が狭い。貴様らの様に小さく小さく纏まるよりも、もっと多くのモノを見てくる」
「そうか」
感情は何も感じ取れない。壁に話しかけている様な気がして馬鹿馬鹿しくなった。
顔を見せに来たのは最低限の義務だ。こちらも何も言わずに去ろうとした時、
「ファブニール。結末を
初めてだった。祖父から何かを与えられたのは。
「……意味わかんね」
本当に意味が解らない。そして、我は生まれて二度目の惑星直列を待って星の外へ飛び出した。
結末。それがこれだ。
ニールは最期の最期まで、祖父の言っていた事の意味を知ることは無かったと眼を閉じる。
降ろされる
「……起きろ」
「……?」
「まだ動けないか?」
突き下ろされた
「……なんで? 貴様は――」
「オレだよ。なんだ? 幽霊を見たような顔をしやがって」
更に【竜殺し】は
目の前に居るのは紛れもない【竜殺し】の姿。しかし、口調や雰囲気はジークのモノだった。
「まだ、終ってねぇだろ? 『ダーツ・ヒーロー』」
【
「……ジークなのか?」
「だからそうだって言って――」
ニールは【
「感動してる所、悪いが時間が無い」
「そうだったな」
ニールは【
『コスモス』は巨大な魔法陣を展開し、その下で最後の調整を終えたバルバトスは完璧な体制で星の重なりを見上げている。
「これが最後のチャンスだ。しくじるなよ?」
「ふふん。貴様もな」
ニールは『ドラゴン』へ戻ると、『コスモス』の中心に居るバルバトスへ飛翔する。
間も無くだ。後1分を切った。準備は完璧であり『コスモス』に不備はない。
『往生際が悪いですよ? お嬢様』
下を見ずともこちらへ向かってくるファブニールの魔力を感じ取る。
本来の三割を切った魔力で何が出来ると言うのか。【竜殺し】を運んでいる様子はない。ならば、本当に唯の悪あがきだ。
『貴女の師はグシオンでしたね。あの乱暴者は本当に空気が読めない者でしたよ』
それでも、どの『ドラゴン』も彼を認めていた。最強だと。
しかし、それは……納得させる程の強さを持たぬ限りは唯の虚光に過ぎない。
『ガァァァアア!!』
ニールの咆哮が響く。バルバトスは予備のキューブを向かわせて、上昇してくるニールの動きを阻害。ソレをかわしながらニールはバルバトスへ向かって飛翔するが、避けたキューブが槍に変わり、背後から翼膜を貫いた。
ニールは滞空能力を失い落下していく。
『地に落ちる前に再生するでしょう。そこで見ていなさい』
世界が再び神話の時代となる瞬間を――
意識を夜空に戻したバルバトスの視界にソレは入って来た。
『剣――』
それは、落ちるギリギリでニールが放った剣。狂信者によって刀身を破壊された、数多の内の1本だった。
『忘れたか? バルバトス』
“人々は
『英雄を喚んだ』
目の前の折れた
“剣に祈りを――”
夜空に【
『おのれぇ!!』
バルバトスはあらゆる疑問よりも【
『コスモス』を壊す危険性から“
剣の届かない距離だ。現れたと言えど何も出来ない!
《ドラゴンを殺せ》
「初めて――」
【
「お前と意見が一致したな!」
『――馬鹿……な……』
即座にもたらされる決死。『
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