第149話 ボクらはイチャイチャすることを拒まない。

 ボクらはそのあとメインストリートのいくつかのお店を楽しんだ。

 雑貨屋では二人の写真を入れたキーホルダーを作ってくれる催しが行われていて、ボクら二人のイチャイチャしている写真をキーホルダーにしてくれた。

 店員さんは冷静に対応してくれていたけれども、ここまで見せつけられるとさぞかし心への負荷も大きかったことだろう…。

 それもこれも遊里さんのテンションはペアリングを手に入れてから爆上げ状態になっているのだ。

 宝飾品店を出てすぐはペアリングを頬にすりすりしながら、「嬉しい♡」の連呼だった。

 かと思うと、ボクと手を繋いで、耳元で「ありがと♡」と囁き、周囲の雑踏からはかなりの刺すような視線をボクは感じた。

 一緒に歩いているだけで周囲の人が振り返るというのはなかなかないことだけれど、遊里さんにはその可愛らしさと魅力があるから仕方がない。

 でも、ボクも遊里さんの彼氏としていつの機会か守ってあげたいとも思っている。

 以前、遊里さんがある男から一方的に罵詈雑言を受けたときに、ボクはそれを跳ね返して守ってあげたことはあった。

 でも、あれは学校内での出来事だから、一般人というわけでもない。

 ボクも相手のことを知っていたから。

 とはいえ、そんな困ったことが起こらないことが一番なので、そう願いつつもボクはその時が来たら遊里さんを守ってあげなければと強く思った。

 他にも手作りジェラートのお店があり、口に若干のしょっぱさが残っていたボクらは自然とジェラートの甘みを欲しがり、店に引き込まれていた。

 新鮮な地域で採れた果物をジェラートにしていることだけあって、果物の甘酸っぱさなども堪能できるジェラートになっていた。

 少しずつ味見をさせてもらった結果、ボクはブルーベリー、遊里さんはストロベリーを選択する。

 汗ばむ陽気の中でジェラートはひと時の清涼剤となってくれて、スッと汗がひいてくれた。

 ジェラートのお店でも遊里さんは少しオマケをしてもらえて、上機嫌であった。

 いつも間近で見ていて思うのだけれど、遊里さんの笑みには裏表がない。

 素直な微笑みだ。

 だから、誰もが癒されてしまう。

 中にはそれを勘違いして、好意を持っていると思い込んで、声を掛けてくる連中がメインストリートを歩いているときに何名かいたが、彼女が「彼氏と一緒にいるのに失礼じゃない?」と怒るとたいていの男は引き下がっていった。

 ボクって周囲から見たら友達みたいにしか見られてないのかなぁ…。

 少し自信を失いそう。

 メインストリートのお店を色々と堪能したボクらは時計が16時なろうとしていたので、ホテルに戻ることにした。

 チェックインは15時からだからすでにホテルに入室することができる。

 ボクらは受付で早苗さんからもらった宿泊券を提示する。

 住所などの必要事項を入力して、カードキーが渡される。

 預かってもらっていた荷物は、ホテルの従業員の手によってすでに部屋まで運んでいただけたらしい。

 何ともサービスが行き届いているいいホテルだった。


「わ~! すごい! すごい景色!!」


 部屋に入るなり、遊里さんのテンションはさらに上がった。

 徐々に夕方が迫りつつある時間帯。

 オーシャンビューが売りのホテルの10階の一室がボクらの部屋だった。

 ビジネスホテルのような狭い部屋ではなく、和室でその奥には景色を一望しながらくつろげる空間まであるホテルだった。

 遊里さんは海の景色を見ながら、はぁ~と一息つく。

 そして、くるっと振り返り、


「もう、一日が終わっちゃうのかぁ~」


 ボクはそんな言葉を聞いて、クスッと笑って、


「まだまだだよ。これから温泉もあるし、豪勢な夕食もある! お楽しみはまだまだあるよ」


 ボクがそういうと、彼女はボクのところにタタタッと小走りで着て、ギュッと抱き着いてきた。


「そうやって、いつも私の気持ちが沈んじゃいそうなときに、隼はいつもポジティブにしてくれる! そういうのすごく嬉しいよ」


 そういってボクの首筋にチュッと小さくキスをする。

 別に何か意図があるわけでもなく、ボクは自然とそう思っていたから、言葉にする。

 いつも同じことをしているつもりだけれど、遊里さんにとってはその言葉が嬉しいと言ってくれる。

 遊里さんの温もりがワンピースの生地を超えて、ボクにまで伝わってくる。

 お風呂までの時間、少しイチャイチャしてもいいかな…。

 ボクの心に少しそんな邪な気持ちが芽生える。

 ボクは自身の気持ちを抑えることができず、遊里さんの首筋にキスをする。


「きゃっ!?」


 急にキスをされて身体をピクッと震わせる。

 ボクはそのまま首筋を舐め始める。


「だ、ダメだよ…。まだ、温泉に入ってないから汗も流せてないんだから…」

「ボクは今、遊里とイチャイチャしたい…」

「あんっ! 私も二人になったらイチャイチャしたかったけど、隼…、積極的すぎるよ!」


 ボクは遊里さんの首筋を執拗にチロチロと舐めあげる。

 遊里さんにとって初めてのことで、徐々に息が乱れ始める。

 首筋を舐めていたボクはそのまま乱れた吐息をする唇と触れ合う。

 抱きしめている遊里さんの身体が少しずつ熱を持ち始めているように感じる。

 ボクと遊里さんはそのまま長いキスを楽しんだ。


「外だとなかなかできないもんね…」

「もう、そういう言い方しないの! あぅん!」


 正面から抱きしめているのをやめ、そっと後ろから抱きしめ、そのまま再び唇を重ねる。

 立っているのも長くなると不自然な姿勢はつらい。

 キスをしたまま、床に座り、キスをしながらイチャイチャした。

 遊里さんの身体に触れるたびに、ピクリピクリと反応する。


「いやらしいね…」

「もう、隼が上手いから…」


 ボクらは何度かキスを繰り返しながら、抱きしめあった。

 もちろん、夕食や温泉があるからエッチなことはしなかったけどね。




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