第33話 お姉ちゃんと隼先輩の関係

 私が目を覚ましたとき、部屋の電気が付いたままで、私は下着とシャツだけ…という赤面だけでは終わらないような恰好だった。

 時計の針は23時30分――――。

 私は気を失っていたのでしょうか…。

 周辺には惨劇を物語る品々(な、何なの!? このエッチな玩具は…)が転がっている。

 それに床にちゃんとビニールシートを敷いてあるあたり、何があったのか思い出せる。

 確かに起きてすぐに感じた違和感は、お尻が痛い…という何ともド変態なことだった。

 思い出してきたけど、さすがにどこかに記憶を詰め込んで、閉じておきたい気持ちになった。

 ある意味、悟れた―――!

 これ以上、深みにハマってはいけない!

 お尻の痛みが教えてくれた事実…。

 ありがとうお尻。そして、ゴメンね、お尻。

 我に返った私はお手洗いに行きたくてたまらない。

 そりゃそうだ…。誕生日会の後、そのままこのに連れていかれて、気を失うまで繰り返されたのだ。トイレに行ける余裕はなかった。

 マンションの構造は同じだから、トイレの位置は分かる。

 トイレを済ませて、出ると奥の方に明かりが付いている。


「あそこってお風呂?」


 そういえば自分もお風呂に入っていなかったことに気づく…。


(まあ、明日の朝にシャワーを浴びればいいか…)


 それよりも中から聞こえてくる『会話』に私はくぎ付けになる…。


「…はぁはぁ…。もう…隼ったらいつの間にかエロ魔人になっちゃってるのね」

「―――――――!?」


 お、お姉ちゃん!?

 そうだ。この声はお姉ちゃんの声だ。

 お姉ちゃんが隼さんと一緒にお風呂に入っている。

 いや、そりゃ恋人同士なんだから、お風呂くらい一緒に入っても全然問題ない。

 それよりもお姉ちゃんは隼さんに何をさせてるんですか!?

 本当に体洗ってます――!?

 漏れてくる声がもうそれ、完全にアウトなヤツなんですけど!?

 ゴクリと唾を飲み込み、さらに聞き耳をたてる。


「えへへ。私も隼に洗ってもらえて満足満足! じゃあ、交代ね」

「いえ、ボクは自分で……」

「えーっ! そんなの悪いよ! お姉さんの言うことが聞けないってーの? 今日は私の誕生日なんだから、私の言うこと聞いてよね! ふふふ…」


 お、お、お姉ちゃ――――――――――ん!?

 な、何してんの―――――――――――っ!?

 アンタ、バカじゃないの―――――――――――っ!?

 清水家のお風呂でが繰り広げられている…。

 お姉ちゃん、陽キャでも普通そんなことまでしないよ!?

 隼さんも止めようよ! 何で流されてるの!?

 てか、高校生の恋愛ってこういうのを言うの!? 何だかけがれてない!?

 ツッコミを入れたいのだが、さすがに愛の巣状態のお風呂に踏み込めるはずもない。


「…んちゅ…くちゅくちゅ…んふぅ……」


 これってキスしてる!?

 もうお互いがメロメロになってるじゃないの…!?

 私の脳細胞は破壊され、鼻血が噴き出した。

 慌ててトイレに駆け込み、トイレットペーパーで鼻血を拭き取る。

 まさか、お姉ちゃんと隼さんの関係がここまで進んでいたとは…。

 しかも、さっき『今日』とか言ってたし。

 ママの予想通り、すでに最低でも1回は終えていたことになる。

 あの二人、案外積極的…。

 トイレで鼻血を止めていると、浴室のドアの開く音がして、自分の目の前の廊下を歩いていく2つの足音が聞こえる。

 通り過ぎていったあと、私はそっとドアを開けて廊下を確認する。

 部屋の明かりはリビングとは違う場所から漏れていた。

 もしかして、あれ、隼さんのお部屋…?

 覗き見るなんて犯罪はしてはいけないし、恋人同士の営みを盗み見るなんて私も絶対にされたくない。でも、でも、私は見たかった…。

 お姉ちゃんがどんな感じで乱れるのか…。



 私は30分くらいのち、楓先輩の部屋に入る。

 楓先輩はすっかり寝息を立てていた。もう起きそうにもない。

 私はあんなに激しいものを見せられて、逆に寝られそうもない。

 明日、学校も部活も休みで良かった…。

 もし、寝落ちしてしまって寝過ごしても大丈夫だ…。

 私は気分を紛らわすために、スマホのSNSを眺める。でも、すぐにスマホをテーブルに置く。

 そのまま、私は楓先輩のベッドにお邪魔させていただき、頭まで布団を被った。


「もしかして、お兄ちゃんと遊里さんのを見ちゃったの?」

「はい…。先輩、起きてらっしゃったんですか?」

「うん…。まあね~」

「先輩も橘花先輩という彼氏がいらっしゃいますよね?」

「うん。いるねぇ~」

「やっぱり彼氏がいると何か違いますか?」

「まあ、違うなぁ~。何かね、アイツもそうだし、私もそうなんだけど、素の自分でいられるのよね…。だから、一緒にいると気分が楽になれるの。それが良いところかな~」

「彼氏が出来たら、私も変われますかね…」

「そうね。あなたにぴったりな彼氏だったらね~。まあ、そのためには、変な趣味は止めた方がいいわよ」

「せ、先輩に言われたくないですよ…」

「ふふ…そうかもね……。ふあぁ~。また眠たくなってきちゃった。お休み~」

「はい…。おやすみなさい…。先輩、ありがとうございました…」


 返事は返ってこなかった。

 先輩はすでに私の横で寝息を立てていた。

 私もすでに先程のような気持ちが粗ぶってはいなかった。

 先輩はもしかして、寝不足になるのを心配して声を掛けてくれたんだろうか…。

 私も彼氏が欲しいという気持ちが強くなったけど、本当にいい人に出会えるだろうか…。

 私の心配が杞憂きゆうとなることを祈りつつ、私は眠りについた。



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