【青春ノスタルジック続編】境界線ジレンマ

オニキ ヨウ

SCENE:0‐0 22時 部屋

嫌な予感がした。


彼はすぐさま電源ボタンを押すと、神妙な面持ちで画面が立ち上がるのを待った。


真っ暗な部屋の中に、眩しいブルーライトが輝く。


映し出されたスクリーンは、必要最低限のアプリケーションしか入れていない。動作も表示されるアイコンも、いつもの通りだ。


しかし、何かが違う。


「侵入されたわね」


 彼女がつぶやく。


 プログラムを開いてみると、操作された痕跡が見つかった。


の情報を盗み出すなんて命知らずなこと」


鈴の転がる声でクスクス笑う。


 非常事態でさえ面白がられる彼女を羨ましいと彼は思う。


 まあ、機械に疎い彼女には、この状況の危険性を理解できないだけかも知れないが。


「盗みだそうとしただけだよ……アクセスしようとして失敗してる。素人の手口だ」


「けれど、見過ごすわけにはいかないでしょ?」


「まあね」


疲れた溜息を吐き出す。彼は椅子から立ち上がり、部屋の電気をつけに行く。


仕事終わりの金曜日に、とんだ事件が舞い込んだものだ。


部屋の鏡に自分の顔を映し出すと、左右で色の違う目の下に、真っ黒なクマが出来ていた。


「楽しみましょう、南雲豪!」


はしゃぐ彼女に、ますます目の下のクマが濃くなったような気がした。

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