ラヂオな時間 -TWO WORLDS- (2)

@spaceblue

第1話 プロローグ 「忙しい朝」

 その日の朝は忙しかった。ニコとトムがこれから就職するラジオ局に出勤しやすいアパートを借りて、引っ越し作業をしているのだ。二人とも荷物こそなかったが、部屋に運び入れる家具、郵便転送の手続き、引っ越し業者への感謝、ニコの体調に配慮した引っ越し…やることは山ほどあった。

 今日で終わるのか?

 そんな疑問さえ湧いてきていた。

 「今日無事に終わったらフライドチキンを食べる。決めたぞ。」

 のんきそうなニコの言葉に対し、朝から引っ越し業者の手伝いや交渉でくたびれきったトムは、

 「勘弁してよ。」

 論外だという口調で話す。

 「今日の激務を終えたら、歩いてファーストフード店へ行くの?そんな元気これっぽっちも残っていないよ。さすがに今日は休みたいんだ。」

 「わかったよ。わがままは言わない。」

 しかし、ニコはふとピンときたように話す。

 「なら、宅配サービスで頼むって言うのはどうだ?」

 はあ?とトムは顔をニコに向ける。

 「宅配なら家にいながら電話一本で頼めるし、今日のような引っ越しの日のディナーにぴったりだ。最近の宅配サービスの拡充で価格も安くなっているし。」

 やれやれというトムは、

 「ニコ。君は全く自分の欲望に正直だね。」

 「悪いことじゃない。こっちだってくたびれた。何か息抜きが必要なんだ。」

 「くたびれたって、この階までエレベーターで上がってきて、それ以降は休んだままの君が言う?」

 「忙しい人たちを見ているとこちらも疲れてくるんだよ。」

 ニコは二段ベッドの下の段に腰掛けながら、

 「疲れたら休むことをしないと。」

 と言い、トムはあきれた様子だった。





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