第8話 決意
「セリアさん・・・俺のせいで・・・」
「加賀さん、自分のこと俺って言うんですね」
「え?いや、」
「おばあちゃんは多分、私を旅に出そうとしたんですよ。おばあちゃんはずっと足が悪くて満足に動けなかったんです、それで私が身の回りのことしていたんです。私はそれで全然よかったんですけど、おばあちゃんは辛かったみたいです。だからきっと今回加賀さんと旅に出るとなってもおばあちゃんは来なかったと思うんですよね。
別れは急でした、気持ちを整理するにはきっと時間がかかると思います。
でも、加賀さんを恨んだりしませんし加賀さんのせいではないと思います、だって加賀さんはおばあちゃんの足を治してくれた。悪いのは教会です。」
今にも泣きだしそうな顔でセリアさんは俺を見た。
俺自身、病院に勤めていた以上、普通の人より人の死に立ち会うことは多かった。徐々に衰退していく姿を見ることや急に悪くなることがある、だけど今回は違う。俺のせいで起きたことだ。
だけど、自分が悪いのだとそう思い、考えることをやめ悲劇のヒロイン気取るのはもうやめよう。一番つらいのはセリアさんだ、そのセリアさんが俺に気を使っているのにそれなのに俺は自分のことばっかり。
後悔しているのなら行動で示そう。
「セリアさん、ここまで来たら俺一人でなんて言わない。助けてほしい。セリアさんができるところまででいいから俺を助けてください。」
「やっぱり、自分のこと本当は俺っていうんですね。
最初からそう言ってくださいよ。それにね、私加賀さんがこの街にきてすぐ目の前の人を助けたじゃないですか、あの姿、姿勢が両親そっくりだったんです。私はそんなあなたの姿を見て支えようと思ったんです。」
「ありがとう」
街の出入り口はすでに教会の人間がいた。なぜわかるか、それは教会の人間は白いローブを着ているから
人捜してるのにそんな目立つもの着るなんて頭が回ってないのかといいたくなるけど、教会の人間からすればその服を着ていることがステータスんだと
いついかなる時もその服を脱ぐことが嫌なぐらい権威の象徴なんだと
「これじゃ手詰まりですね」
「そうですね、どうしましょうか」
「加賀さん、私には敬語は不要ですよ、年も加賀さん上だと思いますし、それにここまで来たら一蓮托生ですからね、遠慮は無用です」
「それならセリアさんもですよ」
「私はこれが普通ですから」
なんてほのぼの話していると案の定
「おい!いたぞ!」
「どうやら声が大きかったみたいだな」
「そんな悠長なこと言ってないで走りますよ!」
あれからもうかれこれ一時間近く逃げ回っていた。
「はぁはぁ」
「ちょっと・・・きついですね」
教会の人間は衛兵と仲が悪いらしいことが幸いして逃げきれている。というより教会の人間は想像通りプライドが高い、誰かに頼るなんてできない。
それに今回、頼るとなると自分たちでは探せないので助けてくださいという風にみられるからだ、そんなことは絶対にできないからこそ、俺たちが逃げれている
それに衛兵は当然街の怪我をしやすい仕事だが教会はそんな衛兵にも莫大な金を要求する、要求して【ヒール】をして貰ったのに骨が変な方向についてたりして結局使い物にならない、つまり金だけむしり取られるわけだ、そんな教会に衛兵もいい気はしていないとなると、積極的に手伝わない
つまり、俺たちの可能性はそこにあるってわけだ。いやどうしていいかわからないけど
「もしかして教会の連中が探してんのってあんたらか」
「ッ!!」
やばい!見つかったか!
「脅かしてすまねえ」
「あなたは」
そこにいたのは街にきてすぐに助けた男の人だった
「教会の連中が探してんのってあんたらなのか?」
「・・・・」
「ならついてきな」
俺たちはどうしたものか、と顔を見合わせた。
「外に出たいんだろ?恩もあるし、何より教会の連中に嫌気を指してるのはこの街の人間ならみんなそうさ。
教会には権力と金がある、金持ちにはいいが庶民はみんな嫌いなんだよ、だけど表立って反抗できないし関わらなければ面倒に巻き込まれないからみんな何もしないんだ」
「それなら」
「よし、行くぞ」
そういってついていくと井戸に案内された
「これは井戸か?」
「ああ、そうだ。20年以上前だが街の出入りに税金がかけられてたことがあったんだ。その時に税金なんて払うのが馬鹿らしいって考えてた連中が枯れてた井戸を掘って街の外に通じるようにしたんだ
今は税金なんてとられることなくなったから使うことないがな」
・・・・あほなこと考える人間ってのはどの世界でもいるもんだな
多分税金とろうと思った側もこんなことされてたら無意味だっただろうし反発も激しかったからやめたんだろうな
まあ、この国の政治家に関してはもう関係ないしいいか。とりあえず井戸を掘った人に感謝しておこう
「道は一本道ですか?」
「ああ、迷いようがないぜ」
「どこに出るのですか?」
「森に出るから逃げるならちょうどいいだろ?」
「ええ、そうね」
「案内してくれて本当に助かりました、正直あのままだと消耗して多分つかまってたと思います。」
「いや、こっちこそ本当に感謝してるんだ、あんたに腕を治してもらえたから明日からも普通に仕事ができる。あの時きちんとお礼ができなかったからここで返せて本当に良かった」
こうして俺たちは街を脱出することができた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます