第4話 スキル発動!え?そんなかっこよくなかった?

「言いにくいことですがおそらく、あなたの腕は折れてます」

「なんてこった・・・」


そういって目の前の男の人は天を見ながら涙流した。

保険や保証はこの国にないのだとセリアさんから教えてもらった。雇う側も仕事にならない人を抱える余裕はないため必然的に解雇となる。それにこの国では教会で直してもらっても元通りにはならないことがありそんなものにお金がかけれないということらしい。

骨が折れるぐらいなら安静にしてたら勝手にくっつくだろうと思ったがどうやら、まともにくっつくことはまれらしい。


そもそも教会に行って、つまり医者的なところで治らないって何してるんだよ、どう考えてもおかしい、医療レベルが低く過ぎる。それともそれがこの世界の一般的なのか?


「では、適当な木と布ありますか」

「あるがあんた何するんだ?」

「まあ、せめてまともに骨がくっつくようにしたいですよね。専門ではないので確証はないですが」

「治るなら何でもいい、やってくれ」


そうして、添え木をしていると不思議なことが起きた。俺の手が光ったと思ったら目の前の人の腕から赤みが引いてもとの色に戻った。

は?なにが起こった?なんだよこのとんでも現象!


「え?」


セリアさんが驚いた声を上げる


「う、腕が元に戻ってる!!あんたがやったのか!」

「へ?え?」

「ありがとう!ってあんたもしかして教会の人か!?」

「い、いえ違いますよ!」

「そうか、すまねえ、もし教会の人だったらお金払えれねと思ったんだが」

「それより、本当に元に戻ったんですか?」

「ああ、この通りだぜ!」


腕を曲げても手首を動かしても、もちろん受傷部を叩いてもいたくないとのことだった。

なんだこれ、意味が分からん。ファンタジーか?それとも元々怪我してなかったのか?だが、間違いなく評価結果では骨折という診断が違ったとしても怪我はしていたはず。


「加賀さん行きましょう!」

「え、ああ、はい」


そういってセリアさんが腕を引っ張り足早に歩いた。半分ひこずられるような形で俺も続いた。遠くで男の人は手を振ってお礼を言ってるので俺も手を振り返したら「そんなことしてないで一秒でも早く歩け」とセリアさんに怒られた。

もう、今日はパニックです。にしても、あの現象はなんだったんだろうか。急に手が光るし相手の腕治るし、それになんか頭に【リハビリ】とかって出たけど、俺今までリハビリの評価しててあんな文字見たことないんだけどバグった?

というか、ここにいることがバグだよな。

「加賀さん、あなた何者ですか」

「何者って言われても・・・」


困るな、何者って言われても転生者ってやつなのかな?あんまりよくわからん


「教会の人なんですか?」

「いいえ」

「では、さっきのあれなんですか!」


ええー、それ俺に聞くんね。わかんないんだけど困ったなー、切羽詰まった感じで聞かれても


「それが本当に何が何だか、あ、でも【リハビリ】って文字が頭に浮かびましたよ?」

「【リハビリ】ですか、きっとそれがあなたのスキルなんですね。」

「スキルですか?技術としてでしたら心得ていますけど」

「あなた、もしかして・・・」


なんとこの世の中、ファンタジーだった!

スキルなるものが必ず一人一つあるみたい、そのスキルによって得られる恩恵が違い、それに沿った職業に就くようだ。それで最初の会話で違和感があったんだな

それでなんでこんなにセリアさんが焦っているかというと、さっき俺が回復スキルを使ったことによるものらしい、回復スキルは基本教会で管理されていて、教会以外で発動されることは基本的に禁止しているらしい。

つまり、教会は病院的な位置で独占してるってことだ。回復スキルは万能ではなく変な骨の付き方をすることもあるらしい。

推測するに回復を促進する能力だが元に戻るわけではないらしい。例えば骨折して、骨がねじった状態で回復スキルを使うとそのねじった状態でくっつくということだな。下手な整形医がよくやることだな

なるほどね、つまり俺は回復スキルが恩恵ってわけだ


「ん?ってことは」

「そうです、教会に目を付けられる可能性があります。」

「ちなみに、目を付けられると?」

「おそらく死にます。

基本的に教会に行けれない人は薬で治します。薬は安価で提供されてますから、ただ即効性はありませんし必ず良くなるとも限りません」

「つまり、治したければ教会に行けと。薬すらも教会からすれば自分たちの利益を得るエッセンスになるわけか」


薬を飲んでも徐々に悪くなる、または苦しんでいる姿を見ると教会に行く。切羽詰まった状況だから多少高くてもお金を払い治療を受けると。

病院が独占で値段が自由に決めれて保険や保証がないとこんな感じになるのか、えらい世の中だな


「にしても教会に命狙われるのか」

「幸いあの場には数人しかいませんでしたし大丈夫だと思いますが今後は不用意に使わないほうがいいと思います。」

「ちなみに、教会に保護を受けるのは?」

「教会で【ヒール】のスキル以外で治療したというのは聞きませんからどうでしょ」

「あー、最悪の結果もありえるわけか」


この時代現代より倫理観壊れてそうだし、あんまり頭よくなさそうだから関わらないのが吉か

セリアさんは大丈夫って言ってたけど、既得権益者が利益を怯えそうになった時の行動って正直常軌を逸してるからな

もしかして初手でつんだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る