第2話 記憶ないってのが通らないだと
「記憶がない・・・ですか」
あっと、これはもしかして頭おかしい認定されてるか。というか、服装が日本の若者が着るようなものじゃないな。でも、言葉通じてるし、世の中は変わってしまったのかもしれない
「そうです」
「でも、あなたは言葉が話せてますよね。そんなウソついてどうするんですか」
「あー、なるほど。記憶がない=何も話せない、と考えられてます?」
「ええ、まあ」
医療の説明をするときに大切なのは相手がどの程度理解しているかだ。自分が分かっているものは相手も分かっているだろうは禁物なのだ、実際に患者の家族に説明するときにその呈で行くと向こうは素人こっちはプロ、家族側が気を使ってわかったふりをする。その結果、全くわかっていないけど説明した気になっているリハビリ職と家族の構図ができる。それでは説明をした意味がない。
したがって一番最初に打つ手は・・・相手の状態を評価する!
「記憶が脳に蓄積されるのはご存知ですか」
「のうって何ですか」
「・・・・なるほど、すみません。ちなみにリハビリテーションって言葉知ってます?」
「リハ・・何です?」
「わかりました。」
絶望的な状況にあることは分かったな。
あんまり詳しくないんだけど、リハビリテーションの概念って確か19世紀ごろだった気がする。知らないってなると確実に言えることは日本じゃないことは確かだな
ここはとりあえず、情に訴えて拾ってもらうか
「仮に記憶があったとしましょう。記憶がある人が山の中に荷物を持たずにいるなんてのは普通はおかしいでしょ?ここで考え付くには何かあったと思いますよね?」
「確かにそうですね、手ぶらで森に入るなんて何しに来たかわかりませんから」
「そうでしょそうでしょ。それで迷子になったのはほんとです、迷子じゃないならそそくさとここから立ち去ればいい」
「それもそうですね。しかも私が声をかけるまでボーとしてましたもんね」
この人基本的に会話してくれるんだな。そもそもほっておく気はなさそうだな。ほっておく気があるなら黙って立ち去ればいいもんな
「つまり、私は非常に困っているわけです。率直に言いましょう。助けてください」
「えらく急に素直になりましたね」
「事情は追い追い話していきますし、たぶんそのうち気が付くと共います。」
「何にですか?」
「記憶がないことに」
「またそれですか」
「まあ、ないことの証明は難しいので諦めます。」
「はぁ、よくわかりませんね。いいでしょ、ここであったのもの何かの縁です。街まで案内しますね」
とりあえずは大ピンチ回避。現代人にとって無一文の野宿はきついぜ、せめてキャンプ道具ほしいな
にしてもこの世界、たぶん俺の知ってる世界じゃないんだろうな
まあ、そこらへんは追い追い調べていくか。
森を案内してもらっているときに、当然の流れで名前を聞くことになったんだが困ったことに自分の名前をどうしようかと
せっかく生まれ変わった?なら名前変えようかなとも思ったりしたんだよ。でも前世の名前も慣れ親しんだしな
ちなみに前世の名前は
まあ、慣れてるしこれで行くか
「それであなたの名前は何ですか?」
「
「私はセリアです、加賀さんはスキル何なんですか?」
ちなみに彼女はもう俺のことは記憶喪失とは認めてない。辛い。いや、記憶がないのはうそだけどもさ
「スキル、ですか?」
スキル?技術のこと?仕事のことなのか?変な聞き方するな
「そうですね、理学療法士、リハビリの仕事ですね」
「りがく・・なんですか?リハビリ?」
そっか、そもそもリハビリって言葉知らなかったな。適当に誤魔化すか、大体質問するときってその質問をそのまま相手に返してあげるといい。一般の人であれば基本的に自分のことにしか興味がない、相手に質問してくるときはその質問を聞き返してほしいと、その話をしたいということだから大体こう切り返すと話は弾むし情報が得られる。
「セリアさんは何なんです?」
「私ですか、植物採取です。」
「植物採取?」
・・・・山菜取り的な職業なのか、なるほどそれだとこの森にいたのも理解できる
でも、なんか違和感の覚える会話だなー、それもとこんな風な会話がこの場所だと一般的なのだろうか
「ええ、ほらこんなに今日も取れたんですよ」
そういって、セリアは籠いっぱいによくわからない植物を見せてくれる
「籠いっぱいですね」
「そうなんですよ!これもスキルのおかげです」
会話にはコツというものがある。経験ないだろうか、初対面の人で会話をしようと思った時に会話が続かなくて気まずい思いをしたことは、または会話で相手を不快にさせてそのあと会話できなかったりと
実は理学療法士というか、リハビリ職は患者と一対一で話す時間が医療職の中で一番長いというのを知っているだろうか
リハビリは基本的に20分1単位で大体3単位リハビリを行う。となれば一対一で一時間話しながらリハビリを行うことになる。そのかで一時間無言で過ごすのは治療者がよくても患者によっては不快感や不安感が生まれるかもしてないので人によるが、話をした方がいいタイプなのか調べる必要がある。
じゃあ、治療に必要なことだけ聞けばいいかというとそういうわけにはいかない。なぜならそうすると尋問みたいに聞こえるからだ、例えば「足痛い?」「どこ?」「いつから?」ということを永遠と聞き続けられると感じ方によってはあまりいい感じを受けないかもしれない。
十分程度ならいいがそれが一時間も続いた日にはキレそうになる、ではどうするか
相手が言った言葉を反復したり事実を話したり、要約、うなずきなんかができると普通に会話になる。
その中でどうしても聞きたいことを質問しあとは相手が勝手に話してくれるというわけだ
結果として相手は話を聞いてくれる人という風に思うし、こっちは知りたい情報が知れるというわけだ。あくまで一つの手段だが悪くないものだ
何が言いたいって?このスキル身に着けててよかったー。じゃないと知らない土地で知らない人でわけわかんない環境で人とまともに会話なんてできるわけない。普通にパニックで質問しまくりだろ
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