欲深爺と木こりの泉

昔々ある村に、とても強欲な爺が住んでいた。

彼は様々なものを安く買いたたき、高く売りつけることで生計を立てている悪名高い爺であった。

ある日、彼はいつも通り露店で法外な商売をしていたところ、村の木こりが山の中にある泉で、とても切れ味の良い剣をもらったという話を耳にした。

「しめしめ、このガラクタをその泉に落として、沢山の宝を貰ってやろう。」

噂に聞いた泉へ向かうと、すぐ近くに看板が立てられている。

そこにはこう書かれていた。

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

┃     ―木こりの泉ガチャ―    ┃

┃☆★初回限定 何度でも引き直せる!★☆┃

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

どうやらこの泉は「木こりの泉」と呼ばれているようである。

しかし、「ガチャ」とは何だろうか。

爺は「ガチャ」なるものを知らなかったが、ともかく今は宝だと泉にドアノブを投げ込んだところ――

「あなたが落としたのは、この [SRスーパーレア]金のドアノブ ですか?」

泉の中から女神が現れていった。

「いいや、それじゃねぇ。」

噂通り泉から女神が出たが、話を聞いていた爺はもっと高価なものを求めて否定した。

「ならばこの、 [Rレア]銀のドアノブ ですか?」

「いんや、それでもねぇ。」

「では、この [Nノーマル]取っ手 ですか?」

「いいや、それもちげぇ。」

その後もこの女神は [HNハイノーマル]アンティークな取っ手 や [N]手提げホルダー 、 [N]鍵付きドアノブ 、 [R]ハンドル剣 、 [URウルトラレア]ドア銃 などたくさんのドアノブやそうでないものを取り出しては爺に聞いていた。

(そろそろいいものが出るはずだ。しかし、高価なドアノブって何が出るんだ?)

「では、あなたが落としたのはこの [ULRウルトラレジェンドレア]マスターキー ですか?」

普段ガラクタにしか接しない爺だが、それらの価値には気づいていた。

そしてどうやら、このマスターキーはあらゆるものを開けられるらしいと考えた爺はつい、こう言ってしまった。

「それだよそれ、ワシが欲しかったのはそれだ!早くそれをこちらに!」

それを聞いた女神は、

「嘘つきのあなたには何もあげられません。さようなら。」

そういうと女神は、全て持ち帰って泉に沈んでいった。

「しまった!あの木こりは正直に言ったから宝がもらえたのか。いや、しかし...」

しかし、爺が落としたのはただのガラクタのドアノブ一つだったので、数時間費やした以外は何も失わなかったと。

めでたしめでたし。

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