木こりの泉ガチャ

鳥野ツバサ

正直な木こりと木こりの泉

昔々ある村に、正直な木こりの青年がいた。

彼は毎日毎日森の中で木を伐り、それを売って生計を立てていた。

ある日、彼はいつも通り森の中で木を切っていたが、うっかり大きく振り上げ、その勢いで少し後ろにある泉に斧を落としてしまった。

「あぁ、一つしかない大切な斧が!」

拾えるかどうかと泉の近くによると、すぐ近くに看板が立てられている。

そこにはこう書かれていた。

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

┃     ―木こりの泉ガチャ―    ┃

┃☆★初回限定 何度でも引き直せる!★☆┃

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

どうやらこの泉は「木こりの泉」と呼ばれているようである。

しかし、「ガチャ」とは何だろうか。

青年は「ガチャ」なるものを知らなかったが、ともかく今は斧だと泉を覗いたところ――

「あなたが落としたのは、この [SRスーパーレア]金の斧 ですか?」

泉の中から女神が現れていった。

「あ、いえ、違います。」

いきなり泉から女神が出たことに驚きつつ、木こりはそう答えた。

「ならば、この [Rレア]銀の斧 ですか?」

「いえ、違います。」

「では、この [Nノーマル]つるはし ですか?」

「いえ、それも違います。」

その後もこの女神は [HNハイノーマル]ピコピコハンマー や [N]のこぎり 、 [N]こん棒 、 [R]バトルアックス 、 [URウルトラレア]妖刀・ムラマサ などたくさんの斧やそうでないものを取り出しては青年に聞いてきた。

(この女神...俺が斧を探しているのを知ってわざとやっているのか?)

「では、あなたが落としたのはこの [ULRウルトラレジェンドレア]アルティメットソード・χカイ ですか?」

普段あまり多くのものに接しない木こりは、それらの価値に気づかない。

しかし、絶対に落ちているはずの斧を出さない女神に堪忍袋の緒を切らした青年は、ついに言った。

「いえ、私が落としたのは鉄の斧です。」

それを聞いた女神は、

「正直なあなたには、この [N]鉄の斧 と [ULR]アルティメットソード・χ を差し上げましょう。」

そういうと女神は、木こりの落とした鉄の斧と、大きな剣を残して泉に沈んでいった。

「なんだったんだ、あの女神は...?」

しかし、女神の残した [ULR]アルティメットソード・χ はとても切れ味が良かったので、仕事が楽になり青年は重宝したと。

めでたしめでたし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る