第5話 結婚祝いの品と不吉な影~ふざけるのも大概にしろ!~
帝国の兵士も武器も、国も滅ぼしつくしたというのを聞いて民が歓喜の声を上げているというのをメアリから聞いてリアは納得した。
──聞いてたところ長年続いてたみたいだしなぁ……というか帝国の人そんなにマナを軽んじてるのに何かわけがあったんじゃないかなぁ……──
この国ではマナは大変重要視されていた。
マナがなければあらゆる命が死に絶えると。
実際色んな国の情報を教えてもらうとその状態が伝わってきた。
ただ、リアがマナの森を復活させた事もあり徐々に改善していくと思うというのをイオスから聞かされ、そうだといいなぁとリアは思った。
──でも、誰もあいつの苦悩は知らなさそうだなぁ──
この間のイオスの弱気を聞いたのはリア一人だ。
ずっと押しつぶされそうだった、これからもそれは続いていくのだ。
──私には無理だよ──
リアはそう思いながら、ここにいないイオスの事を考えた。
彼は今政務にいそしんでいる、リアは護衛付きで神殿で病人や怪我人の治療にあたっていた。
夕方まではここで病人や怪我人の治療をする許可をリアはもらった。
政務が分からないし、国の事もわからないリアにとってこうやって民と交流できる場所と情報収取できる場所は貴重だった。
戦争を起こしたのはこの国ではなく、帝国側だというのも初めて聞いた。
どうやら発展にマナを大量消費している情報を手に入れ、発展を見直すように打診したところ向こうが兵器をもって侵略してきそうになったから戦争になったそうだ。
元城仕えだと言う老人は忌々し気に話してきた。
嘘か本当かなーとリアが思うと、リアの目にだけ「真実」という言葉が見え、なるほど自分の力は便利だなと思った。
夕方になりイオスが迎えにやってくる。
民が皆頭を垂れるのを見て、リアはすごいなぁと感心した。
「戻るぞ」
イオスはそう言うと転移魔法でリア達とともに城に戻った。
部屋に戻ると同時に大臣が入ってきた。
「陛下、各国と民から結婚祝いの貢ぎ物が多数届いております」
「分かった」
「へーどんなの?」
「……良ければともに確認するか」
「いいの、じゃあ確認する」
大臣が案内されるまま、広い部屋に案内される。
宝物庫とちょっと似ていて違うような部屋だ。
無数の宝箱が並べられている。
「どれも悪しき術がかけられているものはありませんでした」
「へー……」
リアは目を凝らして宝箱たちを見ると、全て安全という言葉が表示された。
「開けてみていい?」
「よいとも」
リアは宝箱を開けてみる、美しいドレスや宝石などが入っていた。
「……綺麗だけど私こういうの着ないしなぁ」
綺麗にたたんで宝箱に仕舞う。
「あ、これ本だ。えーと……古代語? なんとか読めるけど……面白くなさそう」
リア興味を引く本とそうでない本をそう言って仕舞う。
「ん、なんだ……こ、れぇ?!」
リアはぶーっと噴き出した。
前の世界にだけある知識をもとにすると、大人のおもちゃと言う奴だったどう見ても。
──こんなもん送ってくんなー!!──
──つーかこんなんもあるのか異世界怖い!!──
リアはそれをたたきつけるように、箱の中にぶち込み直した。
大臣は顔を蒼白にし、イオスは変わらぬ無愛想な表情をしていた。
「下がれ」
「は、はい!!」
「……この国の王に呪いをかけてやろうか?」
二人きりの空間になると、イオスはそう言ってその箱を廃棄処分用のボックスにたたきつけた。
「いやちょっと、待って、待って、そうそう簡単に呪いとかはやめてください」
「ではどうしろと?」
「──文面で、こんなふざけたことするなら呪うぞと送ってからにしてください、せめて」
「……わかった」
リアは安堵の息を吐いた。
──やっぱり何かするんじゃないかなぁ──
あの件から悪い考えばかりがぐるぐる浮かびながらも、神殿に行ってこの国の民の治療をしては城に戻ってくるということを行っていた。
城に帰ってくると、侍女達に出迎えられ、食事をさせられる。
それが終わると風呂に入れられる、広い王族用の風呂らしいが、最近はイオスが乱入してこない、リア一人の風呂だ。
侍女が居ると少し恥ずかしいし疲れるのでちょうどいいと思った。
お湯に映った自分を見る。
顔つきは生前より幼くない感じがする、髪の毛もこげ茶から真っ黒に、目は茶色からサファイアブルーに。
魅力的かと聞かれたら、よくわからないと言うのが本心だった。
正直侍女達の方が見目麗しいように思えた。
メアリは――
「リア様は魅力があります!! 自信を持ってください!!」
と励ますがどうも自信が出ない。
イオスは正直なところ、アイドル等テレビやそういうのに映る人物たちよりも綺麗で美しい容姿をしている。
かなり不釣り合いな気がする。
肩書の「聖女」があっても不釣り合いだ。
リアはこう考えているが、国民は納得している。
マナの森を復活させた聖女、民を平等に癒す癒しの聖女として。
偉大な王の妃として。
リアは風呂から上がり布で体を綺麗に拭くと、下着をつけ、衣に身を包み浴室から出て行った。
部屋に戻りベッドに入ると、メアリが出ていき、明かりが小さい明り以外消える。
扉が開く音がした、メアリが来たのだろうかと少しだけ体を起こすと、普段は扉を開く音さえさせない人物が立っていた。
イオスだ。
扉を閉めると、足音をたてず近寄ってきた。
「……?」
明かりはついているが顔は暗くて見えない、何かおかしい。
手にはナイフがあった。
リアは急いでベッドから抜け出した。
広いとは言え、密室、しかも聞いた話では防音。
扉までの間にはナイフを持った何処かいつもと違う雰囲気のイオスが――。
目に「偽物」表示される。
「お前誰!? イオスじゃない?!」
そう言うと、イオスの姿から黒衣で隠した男に変わった。
「黙って殺されてればいいものを」
男は――暗殺者は遅いかかかった。
思わず身を守るように丸くなってしまう。
パキーンとナイフが砕け散る。
「な!? 貴様、魔王と――」
「我が妻に何をする」
困惑している暗殺者の後ろにはいつの間にかイオス本人が立っていた。
イオスは暗殺者の首をへし折ったのか骨が折れる音が部屋に響いた。
「ひっ!!」
リアは思わず悲鳴を上げる。
扉が開き兵士たちが入ってくる。
「陛下!! どうしたのです!!」
「不埒者が我が妻の命を狙ったのだ、片付けろ」
イオスがそう言うと、兵士たちが死体を片付ける。
イオスは腰を抜かしているリアを抱きかかえて部屋を出る。
「念のため部屋をよく調べよ、私たちは別の部屋で眠る」
「は!」
イオスは別の部屋に連れてきた。
こちらも先ほどの部屋と同じように広く、ベッドも大きい部屋だった。
「私は休む、見回りを強化せよ」
「は!」
ついてきた者にそう言うと、イオスは扉を閉めた。
リアをベッドに座らせると、まるですがるようにリアに抱き着いてきた。
「ど、どうしたの?!」
「……私の姿をまねた者がお前を害なそうとしたことが怖くて仕方ない、これからはお前の命を狙う者がより出てくるだろう、それが不安なのだ……!!」
「……死ぬのは怖いけど、ナイフ砕け散ったし、多分早々死なないと思うから大丈夫だって……うん、まぁ多分だけど……」
自分の腹部に顔をうずめるように腰に抱き着いているイオスの髪をリアは撫でる。
「……神殿へ行くのは当分やめてはくれぬか?」
「……まぁ、こんなことあったんだし我慢するよ……」
「私の傍にいておくれ……」
「あーうん……」
リアは頷いた。
その夜、抱き着いてくるイオスがやたら気になって中々寝付けなかった。
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