異世界ランキング戦の極意《原典》
挫刹
👑異世界ランキング戦のエタル👑
☆0 少年エタルと子猫シュレディ
Lv0.アイテム堀りの少年
カツコン、カツコンと亀裂の入った断層の割れ目に何度もツルハシを振り下ろしている。
「何度も同じ所を掘ってもムダだよ。エタル。それよりそろそろ外で冒険する気にならない?」
切り立った断崖を覆うように組まれた高い足場の一つの端に足をブラブラさせながら座っている小さい子猫が聞いてくる。
「ここで素材が出ないとオレたちは餓死だぞ」
灰色が重なる地層の一部で青味が混ざっている部分に目掛けて渾身の銅のツルハシを振るうと、硬い岩盤が削られていく。
削られていく岩盤からは細かい欠片が激しく飛び散っていき、更に勢いよく会心の一撃を当てると、そこから勢いよく欠けた青い鉱石のカケラが、ツルハシを振るっていた少年の足元にコロリと転がった。
「やれやれ。それが今日の成果かい?」
崖の断面に沿って組まれた木板の足場の端から見晴らしのいい景色を眺めていた仔猫が呆れ果てて横目に話しかけてきた。
「青い鉱石。そこそこかな……」
これを売れば300ルダにはなる。世間から見れば微々たる額だが、今もこのような手間のかかる採掘で生計を立てている少年からすればひと財産だった。
ボロボロの作業着を着た少年が小石大ほどの大きさをした青色の鉱石を掴むと、大きな麻袋に投げ入れて肩に担ぎ上げる。
「よいしょっと」
「あれ。もう帰っちゃうの?」
「これで今日の稼ぎは終了だ」
今日は陰りが見えてきたいつもの採掘場所から位置を変えた筈なのに鉱石の出が悪かった。青い鉱石が大きい物で3つ、小さい物なら8つ。これを道具屋に売っても合計で3000ルダになれば良いほうだろう。
「お金を稼ぐのは大変だね」
「よく分かってるじゃないか」
重い鉱石の入った袋を背負いながら、足場の階段をカンカンと音を鳴らして降りていく。
景色を眺めていた白い毛並みの仔猫も四本足で立ち上がると、軽快に足取り良く少年の後を追ってきた。
「これから勉強?」
「これを売った後でな」
「今日はどこで勉強するの? 自宅? それとも
「ついてくる気か?」
「当たり前だよ。ボクはキミの飼い主でしょ?」
「……。それ……逆じゃないのか?」
「えー? 気が付くの遅いよ。ツッコミはもっと早めに」
「……おぃ」
子ネコの言葉に片眉を上げたまま怪訝な顔でツッコむと、人気のない錆びれた採掘場の足場の階段を一番下まで降りていくと、すぐに町に向かった。
「今どき
「オレはこれが性に合ってるんだ」
「ランカー
「発行だけはしてある。
「ランキング戦には参加してないのになんで登録だけはしてあるの?」
「
「……勿体ない」
「なにか言ったか?」
「なにも」
そっぽを向いたまま黙って後をついて来る白い仔猫を見ながら、エタルはまた前を向いて歩く。この喋る子猫の言う通り、エタルはこの世界の唯一の掟である異世界ランキング戦の
異世界総合ランキングの
異世界ランキング戦とは、この世界の頂点を決める制度の事で、このランキング戦によって得られた成績と人気と財産によって参加者の地位や名誉が現在の序列として反映されて累計、毎年、毎週、毎日、毎時ごとに決められていき各種のランキング順位として記載されるようになる。
今のエタルはその全てのランキングにおいて、話にならない番外のランク外だった。
「そりゃ年がら年中ランキング戦を無視して崖に向かって素材の採掘なんてしてたら順位も落ちるよね」
「オレはランキングなんてものに興味はない」
「またまたぁ。本当は一山あてて有名になろうとか思ってるくせにぃ~」
「オレにはもっと他にやるべきことがある」
「やるべきことって何さ?」
「この世界の……仕組みについてだ」
「まだ、疑ってかかってるの?」
背後で呆れている子猫の言葉に、エタルは頷いた。
「いい加減に諦めろ、とは言わないけどさ。エタルはまだ12でしょ?12歳だったらまだそんなにこの世界の事なんて小難しく考える必要もないんじゃないかな?」
「それがどうしてもダメなんだ」
「なんで?」
「ダメなんだよ……。今のオレの考え方だと、この世界の魔法はどうしても扱いにくい」
「……ふぅ~ん?」
「オレが
「気のせいじゃないの?」
「気のせいだったら、このまま大人になった時に後悔してやるさ。でも今はこの違和感だけはどうしても拭い去っておきたい」
「だからキミは学院を卒業する前に
「幸いオレには心配してくれる親や家族はいなかったからな。お前みたいに……」
そう言ってエタルは背後にいる自分の飼い猫に振り向いた。振り向かれた猫もキョトンとした顔で自分の飼い主を見つめている。
「ボクはまだキミの家族じゃないの?」
「鬱陶しい存在にはもう、なってるよ」
「なら既に家族ってことだよね。うれしいな。で、それはいったい何処に売り飛ばすつもりなんだい?」
「売り飛ばすって……。ああ、すぐそこだ」
少年エタルが指を挿したのは、青い液体が入った丸いフラスコの絵を看板にしてる町の道具屋だった。
「ならボクはその入り口で待ってるよ。ネコは店内に入らない方がいいだろ?エタル。エタル・ヴリザード」
意味有り気な笑っていない目で言って。白い子ネコは店内に入っていく少年を見送った。
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