破滅の魔術師は、人形姫に終焉の恋を捧ぐ

染井由乃

序文

 遠い昔、あるところに、黒き魔の力で穢れ、災いの絶えない土地がありました。


 人々は、魔女と呼ばれる魔の者たちに苦しめられ、絶望の日々を送っておりました。


 人々を憐れんだ女神さまは、あるとき、ひとりの愛し子を地上へ遣わせます。


 愛し子さまは女神さまから賜った祝福の力で土地を浄化し、瞬く間に魔女たちを討ち滅ぼすと、人々に願われ女王として国を作ることになりました。


 それが、美しい蒼穹の国、王国アデュレリアのはじまりでした。


 やがて愛し子さまは、女神さまの御許へ召される前に、あるお告げを残します。


『わたしと同じ白銀の髪と暁の瞳を持つ姫が生まれたら、十八になる年に清らかなまま女神さまの御許へ還しなさい。そのたびこの国は浄化され、災いなく暮らすことができるでしょう』


 愛し子さまと同じ色彩を持ったその姫を、人々は『人形姫』と呼びました。まるで愛し子さまを模したお人形のような姫だったからです。


 お告げ通り、人形姫を女神さまにお還しすることで、王国の安寧は守られました。


 以来、人形姫が生まれるたびに、王家はいちどの例外もなく姫を女神さまに捧げ続けています。

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